FIND SOPHIA

カテゴリーで探す

コンテンツ名で探す

Find Sophia

上智のいまを発見

【先生コラム】小松太郎 上智大学が私を鍛えた

2025.10.02

大学の中と外で、いまおきているあれこれを紹介する「上智のいまを発見」。
普段の授業では知ることのできない学生時代のエピソードなど綴っていただく「先生コラム」の第24回目をお送りします。
先生コラムは、教員が次の教員を紹介するリレー形式でお届けしています。
今回は、梅宮直樹先生(グローバル教育センター)からのご紹介で、小松太郎先生(総合人間科学部)にご寄稿いただきました。


上智大学が私を鍛えた

梅宮教授とのつながり

グローバル教育センターの梅宮先生と最初にお会いしたのはいつだったでしょうか(2007年頃?)。先生の前の勤務先である国際協力機構(JICA)が、「平和構築」に関心を持ち始めた頃だったかと思います。私が書いた教育と平和に関する本を読んでくださり、連絡をいただき、カフェでお会いしました。持参くださった本にたくさんの付箋紙が貼ってあり、先生の真面目なお人柄が垣間見られました。上智大学に赴任されてからも、いろいろお仕事をご一緒しています。

上智大学比較文化学部との出会い

高校では演劇や映画制作にのめり込み、正直、受験勉強をしてまで「良い」大学に入ることの意味は感じていませんでした。なかなか自分で納得できないことは、周りがそうだから、という理由だけでは頑張れない性格でした(今でも?)。ということで、高校3年生の夏はオールロケで長編映画を作り、受験前の冬には演劇部の公演に出演していました。その時に、上智大学の比較文化学部(通称:比文。現在の国際教養学部)を知ったのです。様々な国の出身学生が集まる場所で学ぶのは、自身の価値観や常識が根底から揺さぶられる経験になるはず——そういった経験をしてみたいと強く思いました。

比文での学び

私がこれまで自分のやりたいことをやってこられたのは、比文での学びがあったからです。比文では、自身がそれまで受けてきた日本の学校での学びと大きく異なり、少人数でインターアクティブな授業がほとんどでした。課題も多く、しかし課題をこなさないと、授業についていけない。発言できないと悔しい。英語で学んできたことがなかった私には、厳しい毎日でした。

英語力を鍛えるために、都内の実家を離れ、留学生が多く住む寮に住み(寮長となることで寮費が半額になりました)、交換留学もしました。これらの経験もあり、大学の成績も徐々に良くなっていきました。比文のキャンパスは、当時市ヶ谷にありました。部活(演劇をやるために身体を鍛えたく、器械体操部にしばらく所属しました)やランチなどで四ツ谷に行くと、学生が「キャンパスライフ」を楽しんでいるように見えて、「なぜ自分はこんな大変な学生生活を送っているのだろう」などと思ったこともありました。

練馬にあった国際学生寮の仲間と @四ツ谷

しかし、上智での4年間で鍛えられた英語での文章速読・執筆力や対話力、そして、厳しくともやり抜こうとする力、がんばれば何とか道が開けると信じられるようになったことが、その後の何十年間もの自身の人生を支えてきたように思います。卒業してからは、民間の教育機関、政府機関(JICA)や国際機関(国連ユネスコ)の本部やフィールド事務所、国連ミッションなどさまざまな組織や場所で仕事をしました。コソボやアフガニスタンといった、仕事が困難であり、生活が厳しい紛争後社会でも働きました。そういった場所で、生きること、学ぶこと、対立を乗り越えることを諦めない人たちをたくさん見てきました。それが自身の今の研究の根底にある原体験になっています。

大学で特に印象に残っている授業は、アフガニスタン出身のアブドゥーラ・ゴーシー教授による「第三世界の政治」でした。自身が関心を持っていた開発途上国について、理論的・体系的に理解する機会を与えてくれました。高校生の時から興味を持っていた教育学については、当時は比文では関連科目は開講されていませんでしたが、交換留学をしているときに、子どもの成長と社会化に関する科目をいくつか履修しました。留学中に演劇科の「演技法(Acting)」を履修した際には、大学を中退して演劇に進もうかとも思った瞬間もありました。「教育、開発、平和、表現」というのは今でも自身の探求テーマであり、それを気づかせてくれたのも大学での体験だったかと思います。

交換留学先(米国)で演劇学科の演技法(Acting)科目を履修しました。

これからの世界

これからの世界はVUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity)と表現されます。そんな時代でも、周りに振り回されずに自分のやりたいことを続けていくのは容易ではないかもしれません。しかし、学生の時に培った力や、考え抜いたことは、不安定な状況になっても自身を支えると思います。自分自身が体験した大学での学びを、指導している学生にも提供したいと思っています。

次回は、経済学部経済学科の堀江哲也教授です。堀江先生は、学科長をされながら上智の英語プログラムSPSFの改善・運営に尽力されているバイタリティのある方です。あまり大学の教員らしくない(?)雰囲気がありますが、学生の学びの改善に真摯に取り組まれています。お楽しみに。


次回は……

小松先生から堀江先生(経済学部・経済学科)をご紹介いただきました。次回の「先生コラム」もお楽しみに。