2021.08.30
こんにちは! 哲学科のちはるです。夏休みも残り1週間になりましたね。
今回の記事では、「上智大学グローバル・コンサーン研究所」について紹介します!
これから始まる秋学期に、ぜひ立ち寄ってほしいスポットです。
「授業外でも学びたい!」、「グローバルな問題について気軽に話したい!」と思っているソフィアン、必見です。
1.「上智大学グローバル・コンサーン研究所」とは
「グローバル・コンサーン研究所」について、初めて耳にしたという人も多いのではないでしょうか。グローバル・コンサーン研究所は中央図書館の7階にあり、誰でも気軽に立ち寄れる研究所です! 職員、研究員などがいて所員の方々と話したり、研究所の書籍やDVDを借りたりすることができます。


また、大学では定期的にグローバル・コンサーン研究所主催の企画が開催されています。私は6月に、上智大学グローバル・コンサーン研究所と東京大学KOSSが合同開催した企画に参加し、この研究所の存在を知りました(My Sophiaの行事・イベントページには、学内のイベントが数多く載っているので、ぜひチェックしてみてください)。

2.所員の方の声
総合グローバル学科教授の下川雅嗣副所長・所長代行に、1年生のおみつ記者と2人でオンラインインタビューを行いました!
Q.研究所の発足の経緯や思いを教えてください。
(下川教授)グローバル・コンサーン研究所には歴史があり、前身は1981年に誕生した「社会正義研究所」です。2010年4月に改組し、「グローバル・コンサーン研究所」へと変わりました。社会正義研究所の誕生には、イエズス会で正義の促進が重要だと唱えられるようになったという背景があります。
しかし、2010年になって、「社会正義」という言葉に着目した所員から、「『正義』という言葉を上からかざしたくない」という声が挙がりました。そこで、正義の問題には関わりつつも、上から目線ではなく下から目線で、民衆の立場から社会をより人間らしく変えていきたいという思いのもと、現在のグローバル・コンサーン研究所が誕生しました。
社会正義研究所の時代は、当時問題になっていたインドシナ難民の支援といった、難民の問題を中心に活動していました。一方で現在のグローバル・コンサーン研究所では、様々な人間の尊厳と連帯を脅かす問題に取り組んでいます。

Q.研究所での研究内容、開催企画にはどのようなものがありますか。
(下川教授)まず、この研究所の3つの大きな特徴から説明します。
1つは、人間の尊厳と連帯を脅かす問題をグローバルな視点から研究することです。普通の研究所にあるような「研究」、これが一つの大事な目的です。
しかし私たちは、この研究所の目的はそれだけではないと考えています。その研究の成果をもって、上智の学生や若者、社会そのものの「意識化」の場を提供する、これが2つ目の目的です。Conscientization(批判的意識化)という言葉があります。それは、皆さん学生が社会の問題に気付き、なぜその問題が起こるのかを理解し、社会を変えるためにどうしたらいいのかが分かって、皆さんが取り組んでいけるようになる、という過程を「意識化」と呼んでいます。
そして3つ目は、その変革をするための「実践」につなげていくことです。本研究所がその意識化を実践する場であると考えています
グローバル・コンサーン研究所では、この「研究・意識化・実践」を三位一体のように一緒に捉えて活動しています。研究だけに取り組むのではなく、それを社会変革に結び付けていく人材を養成することを第一目的に置いています。
そのためにいろいろな取り組みを毎年行っていて、年に13~15の企画を開催しています。去年は東アジアの労働問題やマイクロアグレッション、日本の差別の歴史といった議題を扱いました。これらのテーマに沿ったシンポジウム、講演会、ワークショップなどを開催しています。
場合によっては、学生が主体となる企画を開催する点がグローバル・コンサーン研究所の特徴です。学生がやりたいことを提案してきたら、一緒に考えて手伝って企画にしていきます。その際は、所員だけではなく研究所に属している職員、研究員が協力します。現在、学生センターが行っている東日本大震災の支援は、本研究所が始めた学生主体のプロジェクトを、学生センターに引き渡したものです。
年度ごとで決まっている企画も、突発的に何かが起きた時に緊急的なイベントを開催することもあります。一番大きい企画は、年に一度開催される国際シンポジウムです。これは国際基督教大学(ICU)と共催していて、今年で46回目になります。そこではパネリストをお呼びして、各年のテーマについて話す場を設けています。


Q.学生に研究所をどのように利用してほしいですか。
(下川教授)研究所内には、人類の尊厳と連帯を脅かすような問題に関する本がまとめて置かれている書庫があります。その書庫から自分の知らない分野も含めて、いろいろな本を見てもらえればいいなと思います。研究所内にいる職員は、その問題に関心をもって職員になりたいと思った人が集まっているので、「こんなことに関心があるが、どんな本を読んだらいいか分からない」という相談があれば、その相談に乗ってくれると思います。図書を読むスペースで、職員の方々と話しながら本を読むという使い方もできます。
学生から、「こんな映画を上映してほしい」と言われることもあります。その映画の内容が研究所の目的にかなっていれば、研究所が学生のイニシアティブで動くこともあります。
グローバル・コンサーン研究所では、学生が研究所の職員の企画に参加したり、逆に職員が学生の企画の手伝いをしたりことができます。私の理想は、この研究所が問題意識のある学生のたまり場になることです。

Q.大学において、グローバル・コンサーン研究所はどのような場でありたいですか。
(下川教授)グローバルな社会というものはどんどん変化していきます。現在所員が16人いますが、その所員の研究分野と重なっているところは強いけれど、そうではない部分は強くありません。そのため、社会問題が起きたからといって、すぐに対応できるとは限りません。しかし、新しい問題、新しい社会の変化、そこから生まれる叫びにできるだけ敏感でありたいと考えています。新しい課題として、デジタル経済やメディアの問題に取り組んでいきたいと考えていますし、戦争と平和の問題にも危機感を持っています。そして教員と職員と学生の協働のプロジェクトにも取り組んでいければと考えています。
また、研究所の取り組みで「ブックフェア」というものがあります。1か月ほど、図書館1階のスペース(貸出機の横)で、毎年テーマを決めて行っています。今年のテーマは「NO HATE」で、11月23日~12月23日に開催されます。ぜひブックフェアに立ち寄り、皆さんが現在起きている排外主義に関心を持ってほしいと思います。
現在は他の団体もあのスペースを利用していますが、私たちが使用し始めたのがきっかけです。このような、上智に新しい風を吹かすような活動もしていけたらと思っています。ブックフェアの時期には、複数人の先生方で作成したブックリストが置かれています。そのため、ブックフェアで扱われているテーマを研究したいときには、このブックリストがとても役に立つと思いますよ。


Q.これから開催予定の企画はありますか?
(下川教授)先ほど紹介した国際シンポジウムは、毎年上智とICUで交互に開催していて、今年の国際シンポジウムはICUで行われる予定です。10月から12月にかけては、ブックフェアとも絡みながら、ヘイトスピーチ、難民移民、メディアの偏りといったテーマを扱っていきたいと考えています。また、上智の卒業生が主体となって、憲法について勉強することを考えています。何も知らない学生目線で、憲法をどのように理解していけばいいのかを考えるという企画を行いたいと考えています。


Q.学生主体で行う企画を開催したい場合、どのように提案すればよいですか?
(下川教授)最も簡単な方法は、研究所に立ち寄って、親しくなった職員に話してみることです。「こんなことに興味があって、この研究所では学生がイニシアティブをとって活動できると聞いたのですが、こんなことはできませんか?」と話を詰めていくと良いと思います。ただし、上智で開催する場合は教員がつく必要があるので、話を聞いた職員が「○○先生なら協力してくれるのでは?」と紹介してくれます。その後はその先生と連絡をとって、実現に向けて動いていくという流れになります。途中で企画を詰めている間に企画書を作る流れになることもありますが、最初の提案の段階では、分からないことがあっても大丈夫です。
ただし、グローバル・コンサーン研究所は、各年度の予算額の範囲で動いていますから、予算が余っている場合は学生主体のイベントに割り込んで開催できますが、予算がないと開催が翌年になることもあります。その時の研究所の予算に、開催時期が左右されることはあります。
Q.過去に学生主体で開催された企画の例を教えてください。
(下川教授)印象に残っている企画としては、「ガーナのチョコレートはどこから来てどうやって作られていているのか」という疑問を意識化するために開催された、カカオ豆からチョコレートを作るワークショップです。私も参加して、チョコレートを作りました。また中には、高校生が持ち込んだ企画もあります。若者が選挙や政治に関心を持たない現状に向けて行動しようと、高校生が主体の企画を開催したこともあります。
先ほど述べた被災地の支援の一環として、東北の震災で苦しんでいる人々の支援のために、東北の人々の木材を扱った3泊4日のワークショップも行いました。グローバル・コンサーン研究所の入り口にある木製の書籍棚と椅子は全て、みちのく(東北)の被災した木で作ったものです。これも学生のプロジェクトの1つです。

3.おわりに
私が初めてグローバル・コンサーン研究所に足を運んだのは、この記事を書くことが決まる前の7月でした。その時にお話しした方が、なんと私と同じ哲学科出身で、お菓子をいただきながら、哲学科の授業や研究室について楽しくお話をさせていただきました。
グローバルな問題についての資料を閲覧できるだけでなく、研究所にいる方との会話を通して自分の知の世界が広がっていく感覚は、このグローバル・コンサーン研究所ならではの体験だと思います。
また、取材を通して、学生同士で受ける学科の勉強だけではなく、立場の異なる方々と、自分が関心を持っている社会問題について議論できる場であることに、とても魅力を感じました。学生主体で企画を開催するという実践的な学びも、このグローバル・コンサーン研究所で身につけていきたいと強く思いました。
グローバル・コンサーン研究所は、学びへの意欲や行動力がある学生を迎え入れてくれる温かい場所です。
皆さんも、図書館へお越しの際はぜひ足を運んでみてください!
取材へのご協力をいただいた下川教授と、写真の撮影にご協力いただいた研究所の皆様に、心より感謝申し上げます。
【基本情報】
上智大学グローバル・コンサーン研究所
公式ホームページ:https://dept.sophia.ac.jp/is/igc/index.php
場所:上智大学中央図書館 7 階( L713 )
開館時間:月~金10:00-11:30/12:30-16:30 (土日祝日閉室、ほか上智大学図書館が規定する日は休館)