2021.08.30
皆さんこんにちは。少し前まで暖かかったのが打って変わって、秋も深まり肌寒くなってきましたね。
今回は、今年で上智大学が創立110周年を迎えたということで、それに関連して改めて上智の標語である「Lux Veritatis」について深掘りしていきたいと思います! 少々長い記事にはなっていますが、ぜひお付き合いください。
今回の記事に協力してくださったソフィア・アーカイブズの皆さん、本当にありがとうございました。
Lux Veritatisとは
皆さんは校章の中央にある「LV」の意味をご存じでしょうか。これはLux Veritatisの頭文字をとったもので、ラテン語で「真理の光」という意味だそうです。ソフィアンくんのお腹にもLVの文字が記されていたり、校章以外にも上智大学の校歌の歌詞にLux Veritatisが使われていたりと、意外と上智大生にとって身近な言葉であるような気がします。
「じゃあ謎なんてないじゃないか」って思っているそこの読者のみなさん! 実は調べてみると、Lux Veritatisに至るまでには深い歴史があったんです。それではさっそく見ていきましょう!
Lux Veritatisに決まった経緯
Lux Veritatisについて調べていると、1989年の大学院入学式で神学部のペトロ・ネメシェギ教授がLux Veritatisの由来について講演を行ったという記録が見つかりました。その資料を見ていくと、どうやらLux Veritatisにはキリスト教聖書に起源を持っていることが見えてきます。今回はこの資料をもとに、私なりにまとめていきながら、この上智大学の標語について解説していきたいと思います。
上智大学は1913年3月28日に当時の文部省によって、「私立上智大学」として認可されました。またその2年後の入学式では既にLVの文字が刻まれた鷲が飾られており、Lux Veritatisは上智大学創立当初から存在していたようです。これらのことから、上智という校名が決まったのとほとんど同時期に、上智大学の標語(Lux Veritatis=真理の光)も決まったことがわかります。この2つの言葉には何か関係性がありそうですね。
『上智大学史資料集』によると、「光」と「知恵(上智)」を結びつける言葉の大部分は、カトリック教会の典礼において、マリアの賛歌マグニフィカトの前後に唱えられる交唱から引用されたものであると記されています。このことから、上智とLux Veritatisの背景にはキリスト教的な思想があることが見えてきました。
キリスト教に着目してLux Veritatisについて調べていくと、キリスト教の聖書の中で、上智の校章にも用いられている「鷲」によって昔から象徴されてきた福音書記者ヨハネが執筆したといわれる『ヨハネによる福音書』と『ヨハネの手紙一』に興味深い一節があったので、重要な箇所を要約しながら紹介したいと思います。
ヨハネによれば、神は「唯一のまことの神であり」(ヨハネ17:3)、「神は光」(―ヨハネ1:5)。さらに、イエスは、「わたしは世の光である」と言い(ヨハネ8:12)、「わたしは道であり、真理」(14:6)と言っています。
このように、「真理の光」という記述はないものの、「真理」と「光」という言葉で聖書に出てきています。またヨハネ文献において他にも「真の光」という記述があり、ラテン語の翻訳でこれはlux veraと訳されていて、これは聖書の中でLux Veritatisに1番近い表現です。またヨハネ文献において、光と道徳の間には深い関係があり、特に兄弟を愛すること、悪に執着しないことを大切にしています。
また、Lux Veritatisについて聖書以外の角度からも調べていくと、西欧キリスト教思想に多大な影響をもたらした「アウグスティヌス」という人物の名前が浮かび上がってきました。アウグスティヌスは、過去にこのような言葉を残しています。
理性の判断と習慣の判断は違う。理性は真理の光(Lux Veritatis)に従ってものごとを評価し、正しい判断をもって、優れたものを劣ったものに優先させる。逆に、習慣は往々に人を楽の方へ傾ける
アウグスティヌスによれば、人間の精神は物事を理性的に考えるとき、常にこの真理の光によって照らされ、正しい方向に導いてくれるのだそうです。また先程のヨハネと同様、アウグスティヌスも「真理」や「光」を「神である」と絶えず主張をしていたようです。
また、上智大学第7代学長ヨゼフ・ピタウ師は上智大学理工学部創設15周年記念誌にて、アウグスティヌスの言葉を意訳し、「愛は真理の条件である。」という言葉を残しています。
以上の事柄から、上智大学におけるLux Veritatisとは、ただ真理の光というだけでなく、人生において愛を大切にし、、決して悪事に走らないこと、そして私たちが日頃の習慣に左右されず、常に物事を理性的に考えていくことで、私たち学生を正しい方向に導いてくれる神そのものを表している言葉と言えるのではないでしょうか。
また、昭和51年度履修要覧によると「校章の鷲は真理の光を目ざして力強くはばたく鷲をかたどったもので、その姿は上智大学の本質と理想」を表しているそうです。
実際には上智の標語がどのようにして選ばれたかということに関する資料は極めて乏しく、Lux Veritatisの解釈は様々であると思いますが、今回の考察は数ある解釈の内の1つとして考えていただければ幸いです。
校章とLux Veritatis
以上の内容から、上智大学の鷲の校章とLVには強いつながりがあることが感じられたのではないでしょうか。ところで、実はこの校章は、最初から今のような色や形ではなく、上智大学が開校されたころから幾度となく形を変えて今のような形になったようです!
こう見ると、初期の頃と比べて尾の形が全く違いますね! 上智大学の鷲の色や形がなぜ現在のように変化していったのかについては、また機会があれば記事にしていけたらなんて思っています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。Lux Veritatisについて調べていけばいくほど興味深い内容がたくさん出てきて、記事を作成していてとても楽しかったです! 校章の色の移り変わり等、他にも調べていけば面白い歴史に触れることができるかも知れませんね。
今回の記事で用いた資料は四谷キャンパスにある図書館9階のソフィア・アーカイブズで閲覧できます。下に資料名等を記載しておきますので、ぜひ実際に足を運んで手に取ってみてください!
追記
この記事の配信日でもある10/13(金)から、6号館1階の展示スペースで企画展「上智の『鷲』とともにー大学の理想と『校章』―」が開催されます。
今回の記事を機に、より上智大学の校章に興味を持った方はお近くを通った際にぜひ見に行ってみてください!
今回の記事も読んでくださりありがとうございました。
参考資料
ソフィア・アーカイブズ提供
上智と真理の光―上智大学の校名と標語の由来と意味―
『昭和51年度履修要覧』
『上智の100年』
校旗作成時の依頼用図案・色彩
『上智大学理工学部15周年記念誌』