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上智のいまを発見

 大学で阿波おどり?―身体で学ぶ文化

2025.12.15

みなさん、こんにちは。学生センターの伊藤です。 

Find Sophiaの担当者として、今回は10月28日に行われた授業の様子を授業見学レポートとしてお届けします。 

徳島県出身で、幼少期から阿波おどりに親しんできた筆者が、「阿波おどりの魅力」「授業の魅力」という2つの観点から紹介していきます。ぜひ最後までご覧いただければ幸いです。 

踊る身体 

2024年度秋学期より新たに開講された、身体知領域・吉田美和子先生の科目
 「身体をとおして文化を知る」(火曜5限)。
 
今年度のテーマは 「踊る身体」 だそうで、講義と実技を交互に行いながら、多様な地域文化を「身体で理解する」といというユニークな授業です。 
対象となる文化はブラジル、ハワイ、韓国、日本など多岐にわたり、その歴史的背景や芸能の特徴を学びながら、実際に身体を動かして「体感」していきます。身体知領域としても初の試みとのことで、受講生の期待も高い授業です。 
授業の目的は、単に技法を身につけることではなく、 

 「身体をとおして異なる文化に触れる経験を通じて、多様な身体感覚や表現に気づく力を養う」 こと。

その一環として、この日は徳島の伝統芸能である 「阿波おどり」 が取り上げられました。大学の授業で阿波おどりを実践的に体験できる機会は、非常に貴重ではないでしょうか。 

東京高円寺阿波おどり復興協会による講義 

阿波おどりとは・・・ 

まずは阿波おどりの基本的な紹介からしてきます! おそらく名前自体は聞いたことがあっても、それがどういう踊りなのか知っている人は意外と少ないのではないでしょうか。

阿波おどりと言えばその名のとおり、阿波の国・徳島県発祥の踊りです。岐阜の「郡上おどり」、秋田の「西馬音内盆踊り」に並び日本三大盆踊りに数えられ、日本最大級の踊りとして知られています。歴史を遡れば江戸時代発祥の踊りであり、400年以上の伝統が今日まで受け継がれています。 

現在では徳島だけでなく、このあとご紹介する東京・高円寺をはじめ、日本各地で踊られています。また、今日では日本国内のみならず、アジア地域をはじめ諸外国でも海外公演が行われるなど、世界的にも大きな注目を集めています。2025年、惜しまれつつ閉会となった大阪万博でも阿波おどりが披露されました。 

本場徳島では毎年8月11日(前夜祭)~15日までの5日間にわたり開催され、国内外からの観客は延べ100万人を超えます。筆者もその期間に合わせて帰省し、毎年阿波おどりを楽しんでいます。 

余談ですが、徳島県の人口はというと、約67万人です(2025年4月時点)。つまり、阿波おどり期間中だけで県内の人口以上の観客が来るわけです。いかに大規模なイベントかおわかりいただけると思います! 

徳島で行われている有名連による総踊り。息を呑む美しさに感動すること間違いなしです! 

「連」の魅力 

阿波おどりを語るうえで欠かせないのが「連(れん)」という言葉です。わかりやすく言い換えると、「グループ」や「チーム」のこと。各連は、踊り子と鳴り物(三味線・笛・鉦・太鼓など)から構成されます。 
踊りは、大きく男踊りと女踊りに分かれます。(ちなみに、女性でも男踊りをすることも可能です。) 

徳島県内だけでも1,000以上の連があり、それぞれに人数・衣装・振付・曲のテンポなどが異なります。
筆者が特に好きな連では、なんと総勢300人を超える連員がおり、その大所帯による迫力の演技はまさに圧巻です!

 「連の数だけ阿波おどりがある」 

筆者が思う阿波おどりの魅力の一つです。見ていて飽きません! 

各連の高張提灯。連の象徴とも言えます。 

ヤットサー 

阿波おどりには、定番の掛け声がいくつか存在します。そのなかでもっともよく耳にするのがこの言葉― 

「アヤットサー!」 
「アヤットヤット!」 

誰かが「アヤットサー」と呼びかけると必ず「アヤットヤット」とう言葉が後に続きます。まさにコールアンドレスポンスのようなもの! 一般的に「ヤットサー」の前に小さい「ア」が入るのが慣わしです。
本来は、「元気?」や「久しぶり」といった意味もありますが、ここでは「いくぞー!」という踊り手と観客の両者の気持ちを奮い立たせる活気づけの掛け声として使われています。 

阿波おどりがなぜ高円寺に? 

さて、ここまで阿波おどりについて紹介してきましたが、徳島発祥の阿波おどりがどうして関東に、しかも高円寺に伝わったのでしょうか。
普段、中央・総武線を利用する方なら、電車の発車メロディーが阿波おどりであることをご存知だと思います。よって、なんとなく「高円寺=阿波おどり」という印象を持たれる方も多いのではないでしょうか。しかし、その由来まで知っている人はそうそういないと思います。かく言うわたし自身も知らず、今回初めて詳しく知ることができました。 

時は1957年(昭和32年)、当時夏の風物詩であった隣町の「阿佐谷七夕祭り」に対抗し、高円寺商店街の活性化を図るために町おこし企画として考えられたのが、阿波おどりの始まりでした。

しかし、始まった当初は、現在のような踊りや衣装とはかけ離れた、わりと自由な踊りだったようで、名称も「高円寺ばか踊り」と呼ばれていたそうです。その名称からは現在の阿波おどりの要素は感じられませんね。(笑)
その後は連員が徳島に通い、本場の阿波おどりを実際に学びながらだんだんと現在の阿波おどりの形になっていったと語ってくださいました。 

また、規模が大きくなった現在では、警察や消防署の協力のもと、地元住民やの商店街の方々を中心に多くのボランティアスタッフによって成り立っているということも教えてくださいました。 

高円寺阿波おどりの歴史を教えていただいた、東京高円寺阿波おどり振興協会の冨澤さん(写真左) 

いざ、実践へ! 

阿波おどりにはもう一つ有名な掛け声があります。 

 「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損損」 

「ただ見るだけでなく、一緒に踊って楽しもう!」という気持ちが込められています。見て楽しむだけのお祭りもたくさんありますが、阿波おどりは”参加型”のお祭りとも言えます。 

阿波おどりを教えていただいた、朱雀連の連長・井上さん(写真右)

・・・・・・ということで、まずは足元から! 阿波おどりはなんといっても腰を落として中腰で踊るのが特徴的です。基礎となる屈伸運動から始めました。1,2,1,2のリズムで体を動かしていきます。 

阿波おどりでは右手と右足、左手と左足が一緒に出る「なんば歩き」という歩き方をします。

次に男踊りと女踊りにそれぞれ分かれて足の運び方の練習をしました。 
普段歩く時はかかとから地面につけていると思いますが、阿波おどりではつま先を先につけて歩いていきます。 この動作で一段と阿波おどりらしくなります!

女踊りを教えていただいたのは、朱雀連の副連長・島田さん(写真中央)

 「手を上げて、足を運べば阿波おどり」 

と言われるほど、誰でも気軽に自由に踊れるのが魅力の阿波おどり。
足の動作に合わせて手の動きをつければもうほとんど阿波おどりの完成です! 

「流し踊り」と呼ばれる踊り形式。お祭りで最もよく見られます。 

練習の最後には、流し踊りにも挑戦しました。正直、短時間の練習でここまで仕上げられることに驚きました。改めて、阿波おどりは誰でも気軽に踊れる踊りだと感じました。受講生も楽しそうに踊っている様子も見ていて印象的でした。

阿波に来るならお盆に来んせ!
町は渦巻く阿波おどり

いかがでしたか! いろいろと書いているうちに長くなってしまいましたが、ここまでお読みいただきありがとうございます。少しでも阿波おどりに興味を持っていただければうれしい限りです! 

阿波おどりは夏の印象が強いかもしれませんが、実は秋まで全国さまざまなところで開催されています。東京でも高円寺のほか、渋谷・浅草・神楽坂など、多くの地域で楽しめます。筆者も可能な限りそのほとんどに足を運んでいます。
 
ぜひ、来年の夏は高円寺で阿波おどりに酔いしれてみませんか? 
そしていつかは、本場徳島の阿波おどりの熱気を”身体をとおして”実際に体験していただければ幸いです。  

徳島阿波おどり空港

おわりに

冒頭でご紹介した吉田先生の授業「身体をとおして文化を知る」では、阿波おどり以外にも、カポエイラ、フラ、コリアンダンスなど、さまざまな踊りの文化を実践的に学べる貴重な機会です。
興味がある方は、ぜひ来年度の履修を検討してみてはいかがでしょうか。きっと新たな文化理解の扉が開くはず!