2023.11.08
2023.11.08
大学の中と外で、いまおきているあれこれを紹介する「上智のいまを発見」。今回は、ジェンダー・セクシュアリティ問題に取り組む学生団体GES(Gender Equality for Sophia)の稲井清香さん(法律学科2年)に、先日行われた講演会の様子を寄稿いただきました。
ライターで一般社団法人fair代表理事・松岡宗嗣さんが2021年12月9日、「個性を認め、尊重し合うキャンパスを目指して〜LGBTQにおけるアライを通じて〜」をテーマに、講演会にご登壇くださいました。
松岡さんは明治大学を卒業後、政策や法制度を中心として性的マイノリティに関する情報を発信する一般社団法人fairを立ち上げます。現在は、代表理事を務める傍ら、ゲイであることをオープンにしながら複数のメディアにジェンダー・セクシュアリティに関する記事を寄稿しています。
講演会では、松岡さんのこれまでの学生時代の活動から、「アライとして出来ること」などについてお話を伺うとともに、参加した学生・教職員同士で意見を交換する時間も設けられました。
松岡さんが語ったことや、講演会に参加して新たに得た視点などを、学生団体・GESが2回にわたってレポートしていきます。
すでにご存じの方も多いと思いますが、LGBTQとは性的マイノリティを表す言葉の1つです。
L(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシュアル)、T(トランスジェンダー)、Q(規範的でないとされる性のあり方を包括的に表す“クィア”、クエスチョニング)の頭文字からなっています。
言葉として耳にする機会は増えてきましたが、実際、皆さんの周りには当事者はいますか?
また、外見だけで相手の性的指向や性自認が完璧に分かりますか?
松岡さんは講演会の冒頭で、1枚の集合写真を見せて、こう言いました。
「この中に性的マイノリティは何人いますか?」「どの人が非当事者でしょうか」
私たちはもちろん、参加していた周りの学生も悩んでいる様子でした。
身近にマイノリティが“いない”のではなく、“見えていない”だけ。
松岡さんの問いかけは、マイノリティの存在をないものとしないよう、参加者の心に訴えかけました。
しかし、当事者の中には、自分自身が性的マイノリティと明かす「カミングアウト」に大きな壁を感じている人が少なくありません。
日々の生活において、異性愛を前提とした会話や、テレビから聞こえる心ない“同性愛ネタ”など、性的マイノリティの存在がないもののように、または「気持ち悪い」などと存在を否定されるような扱いをされることがあります。
当事者の中には、カミングアウトをせずに社会の“普通”に合わせて振る舞うことで、身の安全を守りたいと考える人がいるのは、想像に難くないのではないでしょうか。
講演会のタイトルにもある「アライ」であるということは、こうした「見えない」というスパイラルを壊し、当事者が自身のアイデンティティを伝えても、伝えなくても安心できる社会をつくることに繋がると、松岡さんは話します。
「アライ」とは「同盟」や「味方」という意味の言葉で、当事者ではないけれど、性的マイノリティを支援したり、差別や偏見をなくすために行動する人を指します。
実際、ある調査を見てみると、アライがいることを公にしている職場では、当事者が心理的に安心できる割合は66.5%と、アライがいない職場の19.7%と比較しても、かなり高い安全性を担保できることが分かります。(「niji VOICE〜LGBTも働きやすい職場づくり、⽣きやすい社会づくりのための「声」集め〜」認定NPO法人 虹色ダイバーシティ、国際基督教大学ジェンダー研究センター、2020)
とはいえ、「アライ」を名乗るためには、具体的にどうすれば良いのか。松岡さんは講演の中で、こう説明しました。
「アライであることに、特定の基準や条件は必要ありません」
例えば、『知る→変わる→行動する』というサイクルを続けることで、「アライ」として成長し続けることが出来るのではないかと松岡さんは言います。
現状を理解し、言動に気を付ける。差別的な表現を用いる人を注意したり、性の多様性の象徴であるレインボーのアイテムを身につけたり……。
「完璧なアライは存在しません。日常的に言動で示していくことが大切です」
また、「アライ」は弱者を“助ける”ヒーローでも、当事者と非当事者を完全に分けるような二項対立の関係でもありません。
「当事者だからアライになれないなんてことはなくて、当事者であっても他のマイノリティのアライになれる。誰もが誰かのアライになれるのではないかと思います」
大学内でアライが出来る1つの活動として、当事者に代わって、当事者とともに、大学と交渉し困りごとへ対応することを挙げた松岡さん。
「皮肉にも、マジョリティ(である非当事者)の声の方がマジョリティに聞いてもらいやすい側面があります。当事者ばかりが声を挙げると、『当事者はうるさい』と、レッテルを貼られてしまう可能性もありますから……」
自分の持つ特権を最大限活かしていくことが、アライであり続ける上で大切だと教えてくれました。
その一方で、注意しなければならないこともあります。
自分自身が行動することで、むしろ当事者の“声”を奪ってしまっていないか、真に届けたいのは当事者の声や経験であることを忘れずに、拡声器のような役割を担っていくのもアライとして求められる役割なのだといいます。
「例えば自己紹介でいきなり『私、アライです』と言われると、少しドキっとしてしまいます。私にとって『アライ』はアイデンティティというよりも、アライであるという行動や姿勢の方が重要だと思うからです」
アライを名乗るだけで満足せず、常に知識や心掛けをアップデートしていくことが大切。そう、松岡さんは伝えたかったのかもしれません。
いかがでしたでしょうか?
GESは今後も、「アライである」ことを難しく捉えず、性的マイノリティ支援の輪を皆で広げていけるよう、引き続き活動を続けていきます!
次回2本目は、同じく共同代表の成田真由(フランス語学科3年)に、今回の講演会を通じて感じたこと、学んだことをインタビューします。
講演者・松岡さんの「誰もが誰かのアライになれる」という言葉が印象的でした。アライになるために、まずはこうした講演会等で「知る」ことが大事なのですね。学生団体GESの成田さんのインタビュー記事に続きます!
「上智のいまを発見」では学生の活躍、耳寄り情報、先生によるコラム、先輩紹介など、大学の中と外でおきているあれこれを特集しています。取り上げてほしい人や話題など、みなさんからの情報も募集中。情報提供は findsophia-co(at)sophia.ac.jpまで。記事形式、ビデオ、写真、アイディアなど形式は問いません。どうぞ自由な発想でお送りください。*残念ながらすべての応募情報にお答えすることはできません。採用させていただく場合のみご連絡をいたします。
それでは次回の発見もお楽しみに。
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