大学の中と外で、いまおきているあれこれを紹介する「上智のいまを発見」。今回は、2021年度学長賞を受賞した「一葉Yichiyo」のLuo Hanningさん(経済学科4年)とMao Jiangmengさん(経営学科4年)に、活動秘話を寄稿いただきました。
WHAT?
経済学科4年Luo Hanning(ラ ハンネイ)と経営学科4年のMao Jiangmeng(モウ コウホウ)が「一葉Yichiyo」という団体を立ち上げ、2021年10月に中国大手テクノロジー企業アリババグループが主催したビジネスコンテスト”Alibaba Internet Innovation and Entrepreneurship Competition”に参加し、Sustainable Design Group(持続可能なデザインコース)において最優秀賞を獲得しました。また、コース優勝に加え、今回のコンテストにおいて「A+」という最も高い評価を得た唯一のグループとして輝きました。
二人の想い
二人の出身地は中国の江西省と浙江省で、両方ともお茶の名産地です。
ちょうどその頃にアリババがビジネスコンテストの参加者を募集しているニュースが目に入り、上智で出会って親友になった二人の最後の思い出として残したいと思い、参加することを決意しました。
茶殻アップサイクル
若者に愛されるタピオカミルクティーのお店で実際に店舗でお話を伺ったところ、実は使用済み茶殻が大量発生しています。また、市販のお茶飲料(ペットボトルや紙パックに入っているもの)の売り上げが伸びている背景、茶殻は製造工程で多く排出されています。
お茶はもともと植物のため、使われた後は生ゴミとして堆肥や飼料などに利用でき、環境汚染に直接結びつくことはありませんが、日本では茶殻のような生ゴミでも「燃やすゴミ」として扱われるので、アジア文化を象徴するお茶を最大限に利用したいと思いました。例えば抗菌性や香りなどお茶独特な個性を利用して、アップサイクルを通じて新しい価値を与えられないかと考えました。
ビジネスコンテストでは、サステナブルな商品開発が求められたので、二人はスマートフォンケースに目をつけました。なぜなら、若者が受け入れやすいアイテムを作りたいと思ったからです。
実際、スマホケースの原料としてシリコンとプラスチックの人気が高いです。しかしながら、プラスチックはいうまでもなく、シリコンも分解されない、そしてリサイクルがほぼできないなどの問題点があります。
二人は普段から環境問題に関心を持っていたので、近年の新技術を見ていく中で、バイオプラスチックに惹かれました。その中でも、特に、とうもろこし由来のPLA(ポリ乳酸)に着目しました。
PLA(ポリ乳酸)とは
ポリ乳酸は生分解性バイオマスプラスチックであり、植物由来の再生可能資源を原料として利用します。
生分解性というのは、分子レベルまで分解可能ということであり、焼却や分解された後に二酸化炭素と水になります。ここで発生する二酸化炭素は原材料である植物の光合成に再利用されるので、自然界がもともと有するリサイクルシステムに繋がります。つまり、植物から生まれて植物に戻り、石油由来のプラスチックと比較すると完全にカーボンニュートラルといえます。
PLA単体では強度が弱いので、竹や小麦の植物繊維を加えて性能を強化する対策が多く見られます。
茶繊維も性能強化の効果があるのではないかと考え、理系に詳しくない二人はPLA素材に関する学習に取り組みました。論文を読んだり、理系の友達に聞いたり、エコ素材の展示会に参加したりして、二人はアイデアの実現可能性を検証するためにとても忙しい数ヶ月を過ごしました。
ビジネスコンテスト
コンテストはアイデアベースでも参加できるので、二人は実際に新しい原材料(茶殻とPLAからなる合成樹脂)を作ってくれる工場を探しながら、起業するための資金調達や将来の販売計画の作成に取り組みました。
経済学科のLuoは投資に関わる政策や、外国人起業や商品輸入の税金などについて調べ、ビジネスモデルを考案しました。
経営学科のMaoは市場調査と競争相手の動向を分析し、マーケティング理論に基づいて販売計画を立てました。
最終発表のその日、二人は6号館で、オンラインで参加しました。
慣れている母校の建物でコンテストに臨んだからかもしれませんが、振り返ってみると二人とも全く緊張せず、むしろ発表を楽しんでいました。
将来に向けて
予想以上の高評価を受けて、二人はせっかく作ったビジネスプランをアイデアのままで終わらせるのではなく、実際に起業して実現させたいと強く思いました。
コンテストでも評価されているように、茶殻とPLAからなる新材料の実現可能性はとても高いです。「世界の工場」と呼ばれる母国の中国で協力してくれる企業を探し回しましたが、発注量が小さいこと、そしてPLAに茶殻を混ぜるのは初めてなので開発にお金がかかることから、20社近くに断られました。諦めかけたそのとき、私たちの想いに共感し、作ってくれる工場にやっと出会いました。
本当はタピオカ屋さんで茶殻をリサイクルして原材料に使いたかったのですが、乾燥させるコストが高いので、まずは製茶場から集めた廃棄茶葉を使いました。
ターゲットの若者に目を向けてもらうためにデザインにもこだわりました。エコでおしゃれ、そしてどの商品も目に見える形で茶文化を伝達できるように注力しました。
例えばすでに商品化されている「黒茶」のデザインコンセプトストーリーは、
「中国西蔵の高原地帯に住むチベット族の諺に、
「茶は血、茶は肉、茶は生命」がある。
千数百年来、蔵茶はチベット族と漢民族の民族感情をつないできた。」
これからは「一葉Yichiyo」として展示会に参加したり、クラウドファンディングを使ったりして、ブランドの知名度を高めることでSDGsと茶文化をもっと多くの人に関心を持ってもらいたいです。
在学生へのメッセージ
1年生:
「長期交換留学行きたいけど、まず短期留学で体験してみたいね」
「わかる!!短期留学プログラムに参加しよう!」
それで、二人はモントリオールに行って、好奇心を持って見知らぬ異国の街並みを歩き回りました。
2年生:
「東大に日中韓三ヶ国の人が集まるインカレがあるらしいよ。面白そうじゃない?」
「気になるね。とりあえず説明会行ってみる?」
それで、二人は主催者側として、夏に北京で行われたビジネスコンテストで日中韓からの大学生と切磋琢磨ができました。
3年生:
「コロナで交換留学に行けなくなったし、二人も会えなくなったから、勉強が続けられなさそう……」
「元気出して乗り越えよう! 君ならできる!」
異国にいても常に励まし合っていた二人は高いGPAを達成しただけではなく、大手企業でのインターンの機会にも恵まれました。
4年生:
「私、京都大学大学院に受かったよ!」
「私、UCL(University College London)に受かったよ!」
「学業優秀賞の代表に選ばれた!」
「私たちの一葉Yichiyoは1位だ!」
「学長賞を受賞した!」
……
大学4年間はあっという間に終わってしまいます。これから二人はそれぞれの道に向かいますが、上智での4年間は一生の宝物に間違いありません。
悔いを残さないためには、出会った人を大切にして、学校と社会が提供してくれるチャンスを掴みましょう。
If you never try, you’ll never know.
最後に
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担当者memo
自らチャンスを掴みに行く姿勢がとても素晴らしいですね。出会った人を大切にし、大学や社会が提供するチャンスを掴むことが大事なのですね。
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それでは次回の発見もお楽しみに。
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