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上智のいまを発見

荒井隆行
「国際」「学際」「人のため」

2023.05.11

大学の中と外で、いまおきているあれこれを紹介する「上智のいまを発見」。
普段の授業では知れない学生時代のエピソードなど綴っていただく「先生コラム」の第8回目をお送りします。先生コラムは教員から次の教員をご紹介いただくリレー形式でお届けします。
今回は、鎌田浩史先生(基盤教育センター)からのご紹介、荒井隆行先生(情報理工学科)です!

はじめに

基盤教育センターの鎌田浩史先生からバトンを引き継ぎました、理工学部情報理工学科の荒井隆行です。2023年度からOverview of Data Science(英語クラス)を担当しており、すでに走っているデータサイエンス概論の英語版ということもあって、日本語クラスご担当の鎌田先生には大変お世話になっています。鎌田先生とは、先生がまだ大学院生でいらした頃からのお付き合いになります。当時、私は電気・電子工学科に自分の研究室を持ち始めて4年目。学部生や大学院生と一緒に、音や音声について自分独自のテーマを模索しながら研究を進めており、そのような中、鎌田先生が所属されていた心理学科の認知心理学研究室の皆様とも研究交流をさせていただいていました。考えてみますと、理系と文系の学問の垣根を超えた交流を随分前から続けてきたのですが、そのルーツを探るため、私の学生時代にまでさかのぼってみましょう。

音や音声の研究との出会い

私自身、上智大学の理工学部電気・電子工学科の出身で、4年生のときから博士後期課程まで6年間ほど、吉田裕一先生の研究室にお世話になりました。学部生の頃、音や音声の研究がしたいと思っていたのですが、当時の吉田研では音声信号処理が研究テーマの中心だったため、そこを第1希望にしました。そして無事に吉田研に配属されたのですが、当時から大学院生が言語学専攻の音声学研究室の講義を受講するなど交流があり、私も仲良くさせていただきました。そして音声研究にのめりこみ、博士後期課程のときに1年間、アメリカに研究留学することになりました。そこでは、コンピュータに音声を自動認識させるため、音声学を中心とした言語学の知識をふんだんに取り込みコンピュータを学習させるという、まさに理系と文系が融合した最先端の研究を垣間見ることができました。その後、上智に戻り学位を取得した後、1年ちょっとの間、同じ電気・電子工学科で助手をしていました。が、もっと挑戦がしたいと思い、助手を辞めて再び研究のためにアメリカに渡りました。1998年にアメリカから戻ると同時に電気・電子工学科で自分の研究室を持つようになってから、今年でちょうど四半世紀が経ちました。

国際音声コミュニケーション学会ISCA(International Speech Communication Association)のDistinguished Lecturer として2019年インドを訪れた際、音声コミュニケーションに関する講義をした後に、音声が作られる機構を説明する模型を使ってデモンストレーションをしている様子。

そもそも音が好き

なぜ音や音声の研究をしたかったかというと、そもそも音が好きだったからです。それでは、そのルーツはどこにあったのか。自分なりに紐解くと、それはその生い立ちにあるのかもしれません。小さい頃、バイオリンを習っていたことも多かれ少なかれ関係していたようにも思います。そしてそのおかげで、自分が出している音が聞いている音と同じか違うか、違うとしたらどう違うかということにとても敏感になりました。小学校4年生の後半から5年生にかけて、医師である父の仕事の関係でドイツに住むことになりました。現地の小学校に通っていたため、今までほとんど聞いたこともないドイツ語だけの環境に身を置き、外国語の発音にも触れるようになりました。ドイツでは、大きな教会でパイプオルガンの荘厳な響きを目の当たりにする機会もあるなど、音に溢れていました。その後、日本で中学高校を過ごす中で自分の将来を考えたとき、漠然と父と同じ医師になろうと思っていた将来像に対し、音に関わる職業に就きたいという思いが強くなり、まずは電子工学を学ぼうと最後の最後に進路を変えました。その後、上智大学で音声の研究に出会い、さらに自分の研究室をスタートさせて以来、音や音声の研究を今でも続けています。その中で、妥協せずに自分が本当に信じる道を選ぶ、それによって道は拓けるということを学ぶことができました。そしてその過程では、多くの方々に出会い、助けられ支えてもらいました。そのすべての方々に感謝しています。

3つのことば

自分自身が荒井研究室を立ち上げるに際し、掲げた3つのことばがあります。それは「国際」「学際」「人のため」。自分も子どものときにドイツで過ごし、アメリカでは研究生活を送りました。その中で多様な世界観や価値観を持つことができたのですが、私が学生のときから今に至るまで、上智大学がさらにその環境を与え続けてくれていたように思います。そして、理系や文系を超えた学際的な学びは、これからの時代、ますますキーになっていくでしょう。そして、医師を目指していた自分ですが、今は医師とは違う別の職業で「人のため」を目指しています。そしてその志は、上智大学のFor Others, With Othersという教育精神そのものであると、今では確信しています。

おわりに

日本語のみならず英語の音声も研究してきたこと、そしてまた、子どもから大人まで多くの方々に音声コミュニケーションの大事さや音声を作り出す機構をわかりやすく説明する活動を進めてきたこともあり、子ども向けの英語番組「えいごであそぼ with Orton」(NHK Eテレ)では、英語の発音に関わる実験の監修などもさせていただきました。その英語についてですが、私はとてもユニークな外国語習得の過去を持っています。それは、中学高校で6年間、英語の代わりにドイツ語を第1外国語として勉強してきたというもの。実は、私と同じクラスで6年間、ドイツ語を第1外国語として勉強してきた「友」が現在、同じ上智大学で教員をしていますので、その先生を次にご紹介したいと思います。外国語学部ドイツ語学科の河﨑健先生です。

次回は……

荒井先生から河﨑健先生(ドイツ語学科)をご紹介いただきました。次回の「先生コラム」もお楽しみに。