こんにちは! またまたみりんです(笑)。
期末のバタバタも少々落ち着き始め、春休みが見えてきた頃かと思います~。
さて、今日は模様を訪ねてのパート2です! ちなみに、パート1の内容は覚えていますか?
ざっくり振り返ると、こちらの模様は何だろう?
ということで「円」「窓」「四つ葉」と予想したのち、キャンパス内にある模様を探したり、
その意味を文献から解釈したりしました~。
パート1の記事はこちら↓
ですが、あくまでも私の解釈なので謎も多く残りましたね。
そこで、今回は教会建築の研究もされている神学部の具 正謨教授にインタビューをしました!
模様についてだけでなく、キリスト教建築について沢山伺ったのでお楽しみに~。
各時代の建築も関わっているため、こちらの年表も参考にしてみて下さいね。
古典系 | 中世系 | |
古代 | ギリシア建築 B.C.7c~ B.C.2c ローマ建築 B.C.2c~ A.D.4c | 初期キリスト教建築 A.D.3c~ 6c |
中世 | カロリング朝建築 8c~9c ロマネスク建築 10c~12c ゴシック建築 12c~15c | |
近世 18・19世紀 | ルネサンス建築 15、16c マニエリスム建築 バロック建築 17c ロココ建築 新古典主義建築 (ネオ・クラシシズム) | ゴシック・リヴァイバル |
ちなみに、模様は「円」「窓」「四つ葉」という解釈で合っていたようです!
では、それぞれの模様が持つ意味を教えてください。
円
まず、キリスト教で1番大切な儀式であるミサで使用されるホスチア(種なしパン、聖体)が考えられます。イエスの体つまり命のシンボルであり、命を与えつくす拝領の意味があります。
また、建築に注目すると13世紀頃から始まったゴシック期ステンドグラスのバラ窓も当てはまります。これはマリア様に捧げるものです。
さらに、西の方向にバラ窓がある場合、1つの世の完成つまり人間の完成や救いを示すシンボルではないでしょうか。キリスト教の方向の感覚は東から始まり西に向かいます。それはこの世の終末に向かい、世の完成を示すためです。
15世紀頃のルネサンス期の思想家、例えばレオナルド・ダヴィンチの人体像は人体比率の理想的な形を表します。それが3次元の球体になると、完成された状態になります。
また、円の形は仏教など他の宗教でも曼荼羅(マンダラ)とされ、命の充満や完全性を表しています。
窓
キリスト教の建物、つまり教会の目的に遡ります。
教会の語源はギリシャ語のエクレシアで、「集められた人々」を表します。共同体として祈りを捧げる「人が集う空間」において発展したのが窓です。
教会は壁に囲まれており、明るくするために窓から入る光が大切です。
また、光は目に見えないことから、「神のしるし」を表します。闇の中に輝く光を取り入れた賛美歌の歌詞も多いですね。
特にこの模様の窓はゴシック期以降の建築のデザインではないでしょうか。
とがったアーチをしていますよね。そもそもローマ帝国時代のものがアーチの典型ですが、ゴシック期以降にこうした紡錘形(ぼうすいけい)に変形しました。天井、尖塔などもこのような形をするようになります。「より天に近づくように」という当時の人たちの思想がありますね。
四つ葉
5世紀頃にアイルランドの保護聖人パトリックが、説教の中でイエスの十字架について語りました。死のしるしである十字架をイエス・キリストの復活で生のしるしと解釈したのです。アイルランドの象徴の色である緑色がさらに四つ葉と結びついたのだと思います。
また、4という数字に着目すると他にも様々な解釈ができます。
旧約聖書の創世記における想像の物語ではエデンの園がありますね。そこではユーフラテス川など4つの川が描かれます。4方向に流れていく川は、砂漠の多い中東では命のしるしでした。旧約聖書におけるエゼキエル書の預言者エゼキエルは、神殿から4つの方向に向かって流れていく水に触れると癒されると述べています。
4の意味は全世界に向かう方向性を示す言葉ではないでしょうか。
―なるほど。それぞれの模様が持つ意味には多くの解釈がありますね。時代を経て変化していく形もありますが、本質の意味は変わらないのだと感じました~。
それにしても、バラ窓は非常に美しいですね。実物を見てみたいです!
大学内の建築にキリスト教に関連した建築の要素は存在しますか?
ほとんどないですね。10号館前のザビエル像くらいでしょうか(笑)。
日本がキリスト教中心の国ではないですから配慮しているのだと思います。ですが、クルトゥルハイム聖堂には庭に聖母マリア像があるなど、キリスト教的なシンボリズムがいっぱいありますよ。
クルトゥルハイム聖堂の記事はこちらから↓
―ちなみに、12月初めのザビエル祭の頃は毎年、学生たちがクルトゥルハイムを紹介するプログラムが実施されているそうです。今年度はオンラインで開催されました。なかなか入れる場所ではないため、実際に見学してみたいですね!
大学内の好きな建築物はありますか?
クルトゥルハイム聖堂ですかね。築130年近くにもなりますし、ぜひ皆さんにも見てほしいです。あとは、12号館や図書館の窓のデザインが好きです。本を開いた形をしていて気に入っています。
―たしかに! 沢山本が開かれていますね(笑)。このような意味があるとは驚きました~。
上智大学の近くでおすすめの教会建築はありますか?
1番おすすめするのは、聖イグナチオ教会(カトリック麴町教会)ですね。本堂はバロック期のデザインです。また、本堂の右にあるザビエル聖堂は洗礼堂をイメージしています。水が流れている音を聞きながら黙想できますよ。
御茶ノ水にあるニコライ堂(東京復活大聖堂)も良いですよ。こちらは東方キリスト教のロシア正教の建築です。こちらの建築は集中式といって真ん中に大きなドームがあるなど、中心に向かって集中した構造をしています。一方で、カトリック建築は長方形のバシリカ式が多いです。
また、目黒区碑文谷にあるサレジオ教会(カトリック碑文谷教会)も美しい建築です。
ロマネスク様式です。天井に注目してみてくださいね! こちらのモザイクは、ラヴェンナの教会を手本とし、イタリア人設計者によってサレジオ教会に反映されました。ダンテは、ラヴェンナの教会の星模様などを見て『神曲』を完成させたと言われています。
現代的な建築では、東京カテドラル聖マリア大聖堂をおすすめします。建物は十字架の形をしています。内部は窓が少なく、部分的に光を入れた少し暗めの空間で祈る教会となっています。
―この大聖堂を建てた建築家は東京都庁舎や国立代々木競技場などで知られる丹下健三さんです! 紹介していただいた教会の中では、残念ながら私はイグナチオ教会しか訪れたことはありません。イグナチオ教会では、特にクリプタという地下空間へ向かう螺旋階段が好きです! 建築好きとしては他の教会も訪れたくなりました~。
最後に、上智生に伝えたいことがあればお願いします
せっかく上智大学に属しているので、もっとキリスト教文化になじんでみてはいかがでしょうか。どんどん世界がグローバル化していく中で必要なことだと思います。それは建築でも、音楽でも少しずつ深めていけば豊かなものになると思います。
興味ある方は僕の授業も取ってみてください。
―具教授の授業の1つにキリスト教建築に関するものがあります。春学期の神学部開講科目である「キリスト教建築Ⅰ」では古代から中世にかけての建築を学び、秋学期の「キリスト教建築Ⅱ」では中世以降を学びます。実は、私は春学期の授業を履修しており、キリスト教建築の知識を深めることができました!
おわりに
では、最後に上智大学の建築の写真を追いかけてみましょう。こちらは、昭和40年(1965)の理工学部案内パンフレットにおける3号館の写真です。
左側の建物にご注目ください。あの模様が多くあしらわれています!
いや~タイムスリップして土手から鑑賞したいですね……!
こちらは当時の上智大学です。現在とはだいぶ異なりますね~。建築も時代に沿って変化していくのだと感じます。
さて、2回に渡ってお送りしてきた「模様を訪ねて」、いかがでしたか?
キリスト教建築の奥深さや上智大学の歴史など、探れば探るほど奥深い魅力が沢山ありました! 具教授がおっしゃる、「キリスト教文化に触れることで得られる豊かさ」には深い意味があると思います。新しいことを学び、世界が広がっていく。こうした豊かさを学生のうちにぜひ身に付けていきたいですね。
それでは、また今度!