第46回音楽祭レポート
2022.11.04
待ちに待った夏休み。みなさんは、定期試験やレポートが終わり、ホッと一息ついている頃でしょうか。
さて、今週の記事のテーマは「俳句」です。6月に第14回留学生俳句コンテスト(2024年春/夏編)が開催されました。今回はその主催である上智大学金祝燦燦会と英語俳句の翻訳をされた谷地元瑛子さん、日本語俳句最優秀賞を獲得されたマー・チェウク・ワイさん(国際教養学科)、英語俳句最優秀賞を獲得されたコブリック・マシュー・ジョンさん(国際教養学科)とその他の受賞者の方々にインタビューを行いました。
「金祝燦燦会」とは上智で学ぶ留学生に対し、何か役に立てることをしたい、という気持ちから始まったソフィア会の登録団体の一つです。そもそも「金祝」とは、上智大学卒業・修了50周年を意味しています。ちなみに25周年は銀祝、15周年が銅祝、また2014年から40周年は「ルビー祝」と呼ばれています。22歳で卒業後50年、つまり最年少の方が72歳ということになります! 俳句コンテストを始めとして、留学生による月例講演会(留学生が日本での暮らしを通して感じたことや母国の文化をプレゼンする会)、勉学奨励金の授与も行っています。
卒業して50年以上経っても、「今の上智」と関わりを持つことができる点です。活動していると、私たちの頃と異なり、神父さんが少なくなったり、女子学生が増えたりなど驚くことが非常に多いです。そして、留学生の若い世代と、異文化交流を行うことによって、新しい発見があります。上智の国際性や、外国語教育の優れている面を活かして、留学生をターゲットに活動していますが、「他者のために」が同時に「自分のため」にもなっており、一つの生き甲斐になっているのです。
留学生の俳句コンテストは、年に2回、春夏と秋冬に開催されていて、英語でも日本語でも応募することができます。そして、俳句に詳しい一流の先生方が審査と講評をしてくださり、英語俳句は素敵な和訳にしてもらえる点がこのコンテストの目玉です。和訳をしてくださるのは、1969年にロシア語学科を卒業された谷地元瑛子さんです。
金祝燦燦会の会員のお一人で、第11回の俳句コンテストから2代目の和訳者として担当されています。言語学と文学をまたぐ仕事をしたいという思いから、国際連句協会(俳諧の連歌を2カ国語で行なう)で活動されています。
はっきりとした境界線があるとも言えないかもしれませんよね。けれど言えることは詩のことばはある固まった意味を伝える道具ではないということです。詩の言葉は重層的なエネルギーを孕むひとつの命であると言えると思います。俳句翻訳はある意味、第二の創作の側面があるのです。何度も推敲します。工夫に工夫をかさねる句もあれば、するする日本語になり、ほぼ苦労なしの俳句もありました。俳句は詩であり、詩とは人間性に深く関わる営為ですから常に人と関わり、交流し、揉め事を厭わず、何があっても絶望せず、ともに人びとと生きてゆくことが俳句にも俳句翻訳にも大切なことかもしれません。
日本語俳句最優秀賞
英語俳句最優秀賞
(マーさん)今年の5月に金祝燦燦会主催の日本語スピーチコンテストに参加したのですが、その際に燦燦会の方々から、俳句コンテストがあることを教えてもらいました。また、元々英語のポエムを書くことが好きだったので、関連する俳句もやってみたいと思いました。
(マシューさん)文学を習っているアンジェラ・ユー先生(国際教養学科)が、このコンテストの審査員もされていて、授業でこのコンテストのことを教えてくれたからです。
(マーさん)はい。大学1年生のときに英語のポエムを読む授業があったのですが、そのとき読んだポエムにすっごく感動したんです! それから、自分の気持ちをポエムにして表したいと思うようになりました。
(マーさん)俳句で季語はとても大事だと思いますが、季語を用いて言葉の雰囲気を引き出すことが醍醐味だと思います。その一方で、五・七・五と短い言葉でいろんなことを伝えないといけない点は、とても大変でした。
(マシューさん)最初の案を磨いていくプロセスが楽しかったです。元のコンセプトをできるだけ活かしながら言葉や構造を変えて、論理的な連なりとしてストーリーを語るようにしつつ、どこか神秘的で説明はしづらいけどなにかを感じ取れる雰囲気があるようにしました。使いたい言葉が文字数に合わなければ他の言葉にしなくてはいけない点や、春や夏にまつわる平凡な題材を選び、それをより深く、美しく伝えられるようにすることが重要であり難しい点だと思います。
(マーさん)私は5月のスピーチコンテストが終わったその夜、眠る前にインスピレーションが湧いて、一気に俳句を7、8句書きました。日本に来てから印象に残ったことを表現したかったので、自分の伝えたい感情や経験を思い浮かべて、季語を探して書くという手順で作りました。
(マシューさん)元々575のルールは知っていましたが、俳句が伝統的にどのように季節に焦点を当てるか調べました。そして、春の俳句を2つ、夏の俳句を1つの合計3つの俳句を提出しました。最初は本当に好きな言葉を考え、その言葉を使って特に美しい俳句を作ることを目指して関連する季節のコンセプトをひらめくのを待って…それを良い句になるまで繰り返しました。
(マーさん)俳句は、自分の気持ちと季語の雰囲気を伝えることが大切なので、気持ちを素直に書けばいいと思います。ちなみに、このコンテストは英語か日本語か選ぶことができますが、「花火」という季語一つ取っても、日本語の「花火」と英語の「fireworks」ではニュアンスが違います。私は、自分の経験や感情を表現できるのは、日本語のニュアンスにあると思い、日本語を選びました。
(マシューさん)ぜひ参加すべきです。奥深いコンセプトを短い言葉に圧縮して表現する良いトレーニングになります。日常生活の中で、例えば、季節に関連して、雨が降る美しさや夜空に浮かぶ月のこの側面のようなものを考え、詩的に表現する方法を考えてみてください。強いイメージや、常にそれを説明するために使われるとは限らない他の概念への比喩を用いて表現するのです。私のアドバイスは、ただ試してみてください。驚くほど良いものができるかもしれませんよ。
クア・アシュリ・カリサ・ゴーさん(国際教養学科)は、毎日新聞社の俳句投稿欄である「毎日俳壇」を見て勉強したそうです。また、ジョソヴェク・ヤナ・エマ・セシルさん(国際教養学科)は、元々俳句について何も知らなかったため、参加をためらっていたそうですが、勇気を出して応募し、とても良い経験になったと言っていました。
みなさん俳句を通して、伝統的な日本語に触れることができたようですね。このコンテストは毎年2回開催されているため、今年も11月に第15回の俳句コンテストが募集開始予定です(表彰式は2025年1月)。日本文化に触れたい留学生の方々は、ぜひチャレンジしてみてくださいね!
では、次回の記事もお楽しみに。
*マシューさんのインタビューは英語で行い、翻訳して掲載しております。