温かい気配りの方 新学長杉村美紀先生インタビュー(Part2)

こんにちは!記者クラブのノアです。今回は春から上智大学学長に就任される杉村先生へのインタビュー第2弾です!杉村先生に9-cafeにてゆう記者とともにインタビューさせていただきました。
杉村先生とお話して何よりも感じたのは、常に温かく、それでいて誰に対しても常に気配りをしてくださる方ということでした。
インタビュー中には大学に対して感じていることについて私たちの意見も真摯に聞いてくださるタイミングが多くありました。ゆう記者とともにすっかりファンになってしまった杉村先生を、インタビュー記事を通じて少しでも皆さんに知っていただけたら嬉しいです。
本記事では第2弾としてインタビュー取材の後半部をお伝えしたいと思います。杉村先生の学長としての今後の展望についてその熱い思いをお伝えできましたら幸いです。
Part1はこちらから⇓
Q.学長としてどのようなことに取り組んでいきたいとお考えですか
上智がこれまで大切にしてきたことは、一人一人の学びにしっかりと寄り添うということです。
学生の皆さん一人一人の思いを大切に、可能性やチャンスを広げる場をより発展させていくことができればと考えています。多様性を尊重し、誰1人取り残さないインクルーシブなキャンパスを実現させることで、他者のために他者とともに(For Others,With Others)という理念に一層叶う学舎にしていきたいと考えています。
Q. 副学長時代で印象に残っているお仕事、また今後引き続き取り組んでいきたいテーマはありますか?ではいかがでしょうか?
副学長時代の仕事で印象に残っているのは、2014年度から展開されたスーパーグローバル大学創成支援事業です。この事業のなかでは、たとえば協定校の数や地域を先生方や職員の皆さんと協力して増やしました。元々すでにあったイエズス会大学の国際連合など、イエズス会のネットワークの中で”For Others、 With Others”という共通の教育精神で結ばれていると感じる場面も多くありました。今後は、交流の量的な拡大ではなく、協定校との信頼関係を軸に、交流を質的に向上させるようにしたいと考えています。
また大学の国際化に際し、上智モデルというものを作っていくことができればと考えています。国際化とは何かを改めて考えると、それは単に英語で授業を行うことではないと思います。アジアを含め海外では、国際化について課題も指摘され始めています。日本の大学でも、英語で授業を行う一方で、もっと日本語を学ぶ機会が欲しいという留学生も多くいます。上智大学では言語教育研究センターの先生方の取り組みをはじめとして、きめ細かな日本語教育と、22の言語を学ぶことができる環境があります。こうした点にも、一人一人の多様性を大切にし他者に寄り添うという上智大学の魅力が詰まっていると思います。また2024年から始まったユネスコ・チェア(https://sophia-unescochair.jp/)の仕事についても、これまで進めてきたことを基に活動を展開していきたいと考えています。
これまで教育や研究活動を通していろいろな国を訪れる機会がありました。上智は世界の各地に卒業生によるソフィア会があり、それぞれの場所で皆さん一人一人が活躍されています。卒業生の方は、それぞれ控えめに、それでいてキラッと光る仕事をされている方が多いと思います。
学生や卒業生の皆さんが築いてくださったものを引き継ぐとともに、主役である学生の皆さんや先生方、職員のみなさんが大いに活躍できる舞台の条件を整えていきたいと思います。
Q.学長に選任された際の想いや抱いた抱負についてお教えください!
実は学長選任の知らせは、ユネスコ・チェアの会議に出席するために訪れていたエチオピアのアディスアベバで朝早く受けました。外ではコーランが響いていました。本当に驚きましたが、推薦してくださった先生方や職員の方々に思いを馳せました。上智には優秀で母校を思う先生方や職員の方が多くいらっしゃいます。上智出身の方も多くいいらっしゃいます。上智が組織として持っている機動力をより良く活かしたいと考えています。
Q.上智の学生の印象を一言で表すとどのような言葉になりますか
奥ゆかしく、言われなくても自分から動いてくれる、それでいて他人に何かを押し付けることがない、そうした人との関わりができる学生が多いと思います。また在学中に学んだことや上智のスピリットを活かしながら、卒業後も自分の選んだ道や仕事に取り組んでくれている卒業生が多いことも素晴らしい点だと思います。先日、20年前と17年前に卒業した学生がお子さんたちを連れてわざわざ会いにきてくれました。新たな船出だからと、船をデザインしたスカーフ(写真にうつっているスカーフ)やメッセージを書いた色紙を届けてくれまして、あたたかで優しい気持ちをとても嬉しくちょうだいしました。
上智には多くの留学生が来てくれています。現在、学内には99カ国の留学生がいます。留学生の出身地域は、アジア4割、欧米3割、その他、中南米やアフリカ、東南アジアなどとなっており、多様性も上智の受け入れている留学生の特徴です。この特徴を活かして、留学生と日本人学生の交流の場を増やす中で、人と人をつなぐことができればと思います。
(より俯瞰的に見ると)現在、国は40万人の留学生を受け入れる政策をとっています。受け入れの人数も大切ですが、それだけが一人歩きしてはいけません。一番避けなければならないことは、留学生を受け入れたものの一人一人にしっかりと対応することができないという状況です。たとえば、英語で授業を行うという場合、教え方や学び方の点で日本語で行う授業とは異なることを考慮する必要があると思います。幸い、上智大学では、英語による教授法を学び、研究しようとする先生方の取り組みが既に始まっています。
上智に来てくれた留学生には上智や日本が好きになってほしい思います。そのためには、インクルーシブで、多様性を重視する取り組みは非常に大切だと考えます。受け入れる学生側にとってもより99カ国の学生が上智で学んでいるということを感じられるようにしていきたいと思います。そのためには、現在の留学生サポートの発展的なあり方も模索できればと考えています。
Q.かなり漠然とした質問になってしまうのですが、現在アメリカではより排他的な動きが強まり、ヨーロッパで民主主義の価値観や政権を担ってきたグループに逆風が吹いています。次のドイツの総選挙でも従来の政党は厳しいのではないかと言われています。まさに混沌とした世界をどのように見れば良いのでしょうか。
現在の世界情勢をみると、さまざまな地政学的な状況が教育の世界にも影響を与えていることは事実です。こうした状況のなかで、大学としてどのような貢献をすることができるでしょうか。私は人のつながりを作り続けることが、排他的な世界の動きに対して、新たな光を見出すことができる一つの方法ではないかと考えています。家人の都合でベトナムに住んでいた時、子どもをインターナショナルスクールに通わせていましたが、日本と国交のない国のお子さんが娘のクラスにいました。国交はない国のお子さんでしたが、娘にとっては大事な友人との交流がいまだに大切な思い出となっています。政治や国際関係がどのような状況でも、人と人のつながりは、それに左右されないと考えます。机を並べて共に学ぶという経験や、そこで生まれた絆は政治やその他の要素でかき消されるものでは決してないと思います。
2016年から2021年まで日本のユネスコ国内委員会で委員を務めて、教育小委員会の委員等を務めていました。また、2022年にはユネスコが1974年に出した勧告「国際理解、国際協力及び国際平和のための教育並びに人権及び基本的自由についての教育に関する勧告」の改訂作業に国際専門家委員の一人として携わりました。ちょうどコロナの時期でしたが、いろいろな国から20人余りの委員がそれぞれ個人の立場で集まり、改定案の素案を作成しました。作業分科会の議長を担当するなかで学んだことは、皆さんの意見をまず聞くことが大切だということです。ユネスコの会議では、どんなに時間がない場面でも、まず皆さんの意見を聞きます。その分、時間もかかりますし、政治的に対立している国同士は、それぞれの政治的を主張を述べるような場面もあります。しかしながら、その一方で、各国の間を周り調整を図ろうとする国もあり、大変興味深いプロセスでした。まずは話に耳を傾け、情報を集めるというプロセスが何よりも大切であり、その上で、調整していくことが重要であると感じました。
今後の私自身の仕事の上でも、大学をめぐるいろいろな人々のネットワークをつないでいきたいと考えています。みんなが話し合うことができる場所として、知のプラットフォームをつくるための調整役になっていくことは、大学の大事な役割だと思います。
改めて皆さんにお伝えしたいのは、ぜひ皆さんと一緒に上智大学という大学を創っていきたいということです。皆さんとともに、しっかりと上智モデルをつくっていくことができればと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
終わりに
最後まで記事を読んでくださり本当にありがとうございます。
インタビューを終え少し時間が経った今でも、杉村先生が温かく私たちの質問を聞いてくださった様子が思い出されます。インタビューを通じて何よりも印象的だったのは杉村先生の温かくそれでいて真摯なお人柄でした。副学長としても堅実に実績を積み重ねてきた先生、インタビューで繰り返しお話されていたのは人と人とをつなぐその調整役としての役割を今後も果たしていきたいという言葉でした。
人と人とのボーダーレスな動きが一層顕著な世界にあって、マレーシアを起点に教育のあり方を研究されている現在の研究内容や恩師の先生方との出会い(Part1)。過去を振り返る先生の言葉には、その節々にこれまでお世話になった先生方や同僚、大学の職員の方々や学生の皆さんへの感謝や温かい眼差しが滲み出ていました。杉村先生であればきっと上智の良さをさらに発展させる、インクルーシブで多様性の溢れる大学を実現してくれる、そう強く感じることができるインタビューの時間でした。
改めて最後まで読んでくださった読者の皆さん、そして取材に協力してくださった杉村先生に感謝です!次号もぜひご覧ください!
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2022.01.11