新学期に向けての報告会
2023.05.05
「リスクを恐れず、自分の人生に当事者意識を持つ」
そう力強く語るのは、上智大学で弁論部の創部やキャリア戦略研究会の会長として活動する法学部国際関係法学科4年、青木研人さんです。一見、順風満帆な学生生活を送っているように見える青木さんですが、その原動力の裏には、中学・高校時代に味わった「2つの大きな挫折」があったと言います。
今回は、青木さんを構成する3つの要素や、過去の挫折をどのようにポジティブ思考へと変換させてきたのか、その熱い生き方とキャリアへの想いに迫りました。

事前に考えていなくて、本当にこの場で考えているのですが……。
やっぱり「一歩踏み出す」というのは、まず1つ目にあるのかなと思います。
他の人が失敗やリスクのことを考えて物怖じしてしまうような局面でも、僕は先にうまくいった時のことを考えられるんです。よく言えば「ポジティブ思考」ですし、自分でも悪く言えば「リスクを過小評価している」とも言えます。このバランス感覚は、本当に苦労して培ってきたところですね。
2つ目は、「人に優しくすること」です。一生かけて取り組もうと思っています。基本的なことですが、奥が深くてとても難しいと思っています。
3つ目は、「自分の人生に当事者意識を持つこと」です。つまり、生きる意味を見つけること。すべての知能をAIが上回る時代を迎えるまでの期間、当事者意識を持つことは幸福追求の最重要要素たり得ると思っています。僕は自分の人生くらい、当事者意識を持って取り組める人間でありたいと思います。
大学に入学してから、まず「上智大学弁論部」という部活を立ち上げました。実は50年ほど前に一度存在していた部活らしく、僕の代でゼロから復活(創部)させた形になります。前半の大学生活はかなり弁論に打ち込んでいました。
過去に遡ると、高校時代は「模擬国連」、中学時代は「科学(化学)」に熱中していました。今は上智大学キャリア戦略研究会の会長としての活動に打ち込んでいます。

人生において、記録に残している大きな挫折が中学と高校にそれぞれ1回ずつあるんです。
中学生の頃は、将来は化学者になって飯を食っていこうと思っていました。中学2年生の時に「化学の甲子園ジュニア(化学オリンピックのような大会)」に出場して全国大会まで行き、結果として「全国大会優秀賞」をいただきました。ただ、これは表彰台(上位3位)にギリギリ届かなかった人たちがもらえる賞だったんです。当時ものすごく悔しくて、「自分は化学の道ではないな」と、高校からは全然違うことをやろうと決意しました。
高校に入ってからは「模擬国連部」に入り、これが自分にすごく刺さって楽しかったんです。ただ、高校1年生の時に全国大会を目指した際、学内選考(校内予選)の人数縛りで落とされてしまい、出場できませんでした。これがまたものすごくショックでした。
そこから1年間修行し、次の年には無事に全日本大会に出場させていただくことができました。さらに、帰国子女ではない人間としては史上初となる、世界大会での優秀賞をいただくことができたんです。
中高での挫折は、それぞれ種類が違っていました。
1回目の化学の時は「これは無理だな」という諦めに近い挫折。一方で2回目の模擬国連の時は「いけるだろう」と思っていたのにダメだったという悔しさです。「なぜダメだったんだろう」と自分を猛烈に見つめ直す時間はものすごく苦しかったですが、自分の傲慢さや足りない部分に気づくきっかけになりました。
中学も高校も、本当に一瞬で終わってしまったという強い印象があります。だからこそ、大学生活も漠然と生きるのではなく、「自分から何かを掴みにいく生き方をしたい」と、自分の生き方について考えていました。

「どこまで本気で相手のことを考えられるか」だと思います。
そもそも「人を動かす」という言い方自体、僕のスタイルにはあまり合っていなくて、結果として「人が自分のために動いて助けてくださる」という方が正しいのかなと思っています。
どんなに自分が賢く喋っているつもりでも、相手にはこちらの意図が見破られます。それは年齢差やキャリアの差に関係なく、人間同士として伝わってしまうものです。だから下手な綺麗ごとで隠そうとせず、「いま困っています。あなたの力がないとこの問題が解決できないので、助けてくれませんか」と腹を割って、素直に自分の状況を開示すること。隠し立てをせずに伝えることこそが境界線であり、それが伝われば、人は助けてくれるのだと思います。
実は、高1から高2の模擬国連の修行期間を通じて、僕自身のマインドも変わりました。昔の僕なら「人を動かす」という言葉を自然に受け入れていたと思いますが、「人を動かすのではなく、相手が助けてくださるのが正しいんだ」と気づけたんです。
主にキャリア全般について、その道を歩まれている先輩方から学ぼうという趣旨のサークルです。
ここで言う「キャリア」は非常に広い意味で捉えていて、就職活動だけが答えではありません。大学院進学、留学、あるいは教職免許を取って先生になることも立派な道です。どんなキャリアを選んでもいい。ただ、その選択を「自分が心から納得できるものにしていこう」ということを大切にしています。
世の中、なんとなく周りが始めるからとりあえず就活をしよう、という空気になりがちです。仮に就活をするにしても何をするにしても、他人がやるからではなく、「自分の意思でこの選択をした」と自信を持って言えるようにしたい。この活動理念を一言で表したのが、「自分の人生に当事者意識を持つ」ということです。これは後に講演をしていただく田中渓さんの言葉とも深くつながってきます。

先ほどの「自分の人生に当事者意識を持とう」の裏返しで、強い課題意識があったからです。
上智の同級生や先輩、後輩はみんな大変優秀で、本当にいい人に恵まれてきたと感じています。その一方で、どこか「小さくまとまって、保険をかけにいく戦い方」をする人が結構多いのではないか、と感じる部分もありました。
客観的に周りから見れば「絶対にもっと上に行けるポテンシャルがある」という人でも、「私はこのくらいまで行けたらそれで十分かな」と口にしている。それがすごくもったいないなと思ったんです。キャリ研という場所を通してキャリアについて真剣に考え抜き、もし自分が小さくまとまる必要がないと気づいたなら、そこに気付くいい機会にしてほしい。それが立ち上げの原動力です。
上智生には「堅実に賢く、保険を張りながら生きよう」という傾向が少し強いのかなと感じていました。そこで、「上智生ってここまでいけるんだ!」という一つの指標を提示したいという思いが強くありました。
田中渓さんは、まだ上智大学から外資系金融に行く人がほとんどいなかった時代に、一人で暗闇を切り開いていかれた大先輩です。第一線で活躍されている姿を見ていただくことで、上智生の可能性の限界を広げたいと考えました。
もう1つの理由は、僕自身が中3の頃からずっと思っていた「自分の人生に当事者意識を持つ」という考え方と、田中さんがおっしゃっている「自分の人生の操縦桿を他人に渡すな」というメッセージが抜群に共感したからです。社会や国際舞台で活躍されている大先輩が自分と同じことを言っているのがものすごく嬉しくて、「この人をより多くの人に知ってもらいたい、布教したい」という、広い意味での僕の「推し活」でもあります。

……正直に言うと、「1人のほうが動きやすかったな」と感じる瞬間はあります。ただ、そう思ってしまうこと自体、僕の「弱さ」だと思っています。
1人でやれば、全ての情報を自分が握れるし、完全自己責任です。自分1人が極限に優秀であれば、1人の方が動きやすいし、スピードも出せると思うことはあります。でも本当に強い人間は、人と一緒に何かをすることのリスクすらも笑って受け止める器量があるはずなんです。
自分が仕事に一番詳しいがゆえに「自分がやった方が上手いし早いじゃん」と思ってしまうのは、ある種の宿命です。もしこれを読んでいる人の中に同じように悩んでいる人がいたら、1回心の中で自分に拍手してあげてほしいです。それだけその物事を突き詰めてきた証拠だから。
でも、次の段階として「1人では到達できない世界」が絶対にあります。
「1人の方がいい」と思っているうちは、裏を返せば「まだまだ」というサインです。「もっと上の世界があるんだよ、それは仲間(自分を助けてくれる人)とじゃないと絶対に到達できないよ」ということは、伝えておきたいですね。

僕が一番伝えたいのは、「守るものがあるというのは、やっぱり大事だな」ということです。
最近、世間では「失うものが何もない身軽な方がいい」という論調もありますが、僕はそれを疑っています。守るものが何もない人間の原動力は「自分のため」だけになり、それは意外と天井が低くて、一言「諦めた」と言えばそこで終わってしまうからです。
前回のイベントを1人で終えた後、実は少し寂しかったんです。一緒に肩を組んで喜ぶ仲間がいなかった。自分1人のための仕事の達成感は、自分1人で終わります。でも、守りたい家族、仲間がいて、その人たちのために戦うとき、人間の限界は引き上げられます。自分のためだけに働いているようではダメで、誰かのために戦えるようになってからが「人間本番」だと思うんです。
いま、キャリ研の仲間は40人ほどに増えています。来月の第2回講演会は、スタッフとして運営してくれる仲間が増えた以上、もう僕1人の失敗では済まないフェーズに来ていて、本当に痺れますね。
ぜひ、「痺れるような無茶」をしてください。
自分と一緒に失敗して、泥まみれになって笑ってくれる仲間を見つけることは、一生の宝になります。学生という時期は、大人なら大きなお金がかかるような大挑戦がタダでできてしまう、人生最後の「ドリームフィーバータイム」なんです。
だからこそ、気後れせず、やってみたいと思ったことはもうやっちゃった方がいい。それが今の皆さんの特権です。
世界は、マジであなたのことをどこかで助けてくれる人で回っているし、そうやって回していくしかありません。自分1人の力で到達できる最高到達点なんて、自分が思っているよりずっと低いです。やっぱり、人と人との繋がりなんです。
上智大学の理念である「他者のために、他者とともに(For Others, With Others)」は、本当に正しいなと心から痛感することばかりです。もし今、道に迷っている人がいたら、一度大学の理念を読み返して、静かに自分を見つめ直す時間を作ってみるのもいいのではないかと思います。

AIが人間の知能を上回るかもしれないこれからの時代だからこそ、「自分の人生に当事者意識を持つ」という青木さんの言葉は、私たち自身の生き方をも見つめ直すヒントをくれている気がします。
青木さんが会長を務める「上智大学キャリア戦略研究会」では様々なキャリアイベントを企画しています。記事の中で触れられた「田中渓講演会」の詳細や最新情報は、こちらのアカウントをチェックしてください!(@sophia _strategy)
