ボランティア・ビューローでは2011年に発生した東日本大震災以来、各地の復興支援ボランティアでの活動に交通費補助を行っています。この制度を利用して能登半島での災害復興支援ボランティアに参加した学生の声をお届けしていきます。今回は慶應義塾大学ローバースカウトと共同で活動をしてきた上智大学ローバースからの報告です。
活動場所
石川県珠洲市内の小中学校
活動期間
2024年8月18日(日)~8月24日(土)
活動内容
震災前から珠洲市教育委員会が実施していた「子ども教室」に訪れる小学生に、学習支援・学習資源の提供・アウトドアスポーツを通じての居場所づくりをしました。
活動後に感じた被災地、被災者が抱える「課題」、そこから読み取れるニーズ
新聞学科の学生
被災地の課題として一番に感じたのは人手不足です。主要な道路が通行可能になったとはいえ道の起伏は激しく、車での移動は大きな振動を伴うものでした。細い道の中には大人の胸くらいまで液状化したマンホールが突き出た道もあり、まだ通行に難があることをより一層感じさせました。また、現地の方から水道が復旧できていない地域があると伺いました。浄水場も修復できていないため、実際に私たちも飲料水の確保に気を使いました。建物は少しずつ解体や片付けが進んではいるものの地震発生直後のままになっているものが大半でした。夏や秋は台風で瓦礫が飛ばされてしまう危険性があり、被災者の方々には私たちが想像し得ない不安や危険があるのだと考えさせられました。半島の地形や被災地の負担を考えればすぐに人手を増やすのは難しいことではありますが、支援の熱が冷めないよう迅速な対応と広報が必要だと強く思います。
成澤椿(文化交渉学専攻1年)
夏休みの宿題をコツコツとこなし、遊ぶときは自分のお気に入りのおもちゃや工作に没頭する子ども達の持つエネルギーとパワーに圧倒されました。子ども達の多くは、震災から3ヶ月間という長い時間を不便な避難所で暮らし、その後、仮設住宅から学校に通っています。自分の家や生活そのものを失った子も、友達が市外にいってしまった子も少なくはありません。今まで当たり前だったものが一瞬でなくなることを、10歳にも満たない子ども達が体験したことを想像すると胸が痛みました。
ある男の子が「能登地震がなかったら僕は今の学校にもいないし、放課後教室にもいないし、バッキー(私)にも会えなかったよね」と言ってくれました。もちろん、失ったものは大きく、後悔や悲しみが癒えたとは言えません。でも、珠洲市の人々は今を生きるために、今の生活を大事に、今できることをする選択をされていました。能登の地震は過去の出来事ではなく、現在も進行中であることを一人でも多くの人の心に届けなければいけないと感じました。
田中敏基(理工学専攻2年)
小学校では予定より多くの子どもたちが参加して、なぞなぞや工作といったアナログな企画で盛り上がることができました。子どもたちが多かった要因は、遊ぶ場所が少ない可能性が挙げられます。教育委員会の方に周辺を案内していただいたとき、町の多くが瓦礫の山で、安全に子どもたちが屋外で遊べる場所がかなり限られていると感じました。また、小学校は夏休みで、親は子どもたちの面倒を見る時間が増えます。そこで安心して預けられる場所の一つである学校に行かせたのではないかと思いました。子ども達の居場所の不足が課題なのではないかと考えます。
全体的な感想・気づき
江口亮太(経営学科3年)
被災者の方々の現状、勉強に励む姿や元気に遊ぶ姿を見ることができ、心が温まると同時に今後も我々にできることは積極的に奉仕したいと思いました。少しずつ復興が進んできているものの、まだ十分に進んでいないと感じました。具体的には、町中にまだ倒壊した建物の残骸が残っていることがあげられ、その要因として水道水が飲料水として利用できないこと、多くの飲食店が再開していないため、災害復興支援者が長期的に入りづらいことが挙げられます。利用させていただいた宿泊施設は解体作業者の方々も宿泊していたのですが、別会社の方々と作業状況の引き継ぎに苦労している様子が見られました。経済的要因に加えて、十分な生活インフラが整っていないことも復興が進まない現状に影響を与えていると考えました。震災当初は各企業がキッチンカーを出すなど、被災者への支援は多くあったものの、現在はそういったものは見受けられず、災害復興支援者への支援が少ないと感じました。被災者に向けた支援に加えて、災害復興支援者に向けた支援もする必要であるのではないかと、今回の活動を通じて考えました。
小野田佳志乃(経営学科1年)
今回の教育支援活動では、事前に考えた計画と現地のニーズの相違を目の当たりにし、それらに適応させることの大切さについて学ぶことができました。地震が発生してから半年以上が過ぎ、メディアでの報道もほとんどなく現地の復興状況が把握しにくい現状があります。そんな中で子どもたちを対象にした支援を考えることは容易ではなく、地震を通していまだに大きな心理的負担を抱えている子どもたちの思いを汲み取りながら接することは人との関わりの大切さに気づく重要なきっかけとなりました。子どもたちの不安や傷を完全に取り除くのは難しくとも、積極的に関わりを持とうと努力することが「時間」以外の有用な解決策であると感じました。
初めて活動に参加しようと考えている学生へのアドバイス
関根朱里(フランス語学科3年)
まず「完璧を求めすぎないこと」を伝えたいです。最初からすべてを理解し、何でもできるわけではないので、現地の人々や他のボランティアと協力しながら、少しずつ自分ができることを見つけていく姿勢が大切です。また、被災地に行く前に、その地域の現状や文化について学んでおくと、活動中にスムーズに対応できる場面が多くなります。さらに、活動中は「自分が学ぶ姿勢」を持つことが重要です。ボランティアは人を助けるだけでなく、同時に自分自身も多くのことを学べる機会です。困難な状況に向き合う活動ですが、得られるものは非常に大きいので挑戦する気持ちを大切に、心を開いて現地での活動に取り組んでほしいです。
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