2023年8月7日~8月10日、福島県飯舘村の義務教育学校で、上智生が9年生の学習支援を行いました。
参加者の1人である狩野祐輝さん(文学研究科2年)が以下の報告を作成してくださいました。
上智大学は2014年度に福島県飯舘村と協定を締結し、交流を重ねています。今年は、コロナ禍を経て4年ぶりの現地交流が実現。9年制の義務教育学校である「飯舘村立いいたて希望の里学園」に、上智生9名が赴きました。
学部1年生から大学院生まで、学部も学年も異なる上智生達。教員志望の学生は勿論、「福島県の復興について知りたい」「今の中学生の価値観を学びたい」等、それぞれが熱い思いを持って集まりました。しかし準備はオンラインで行われたため、活動開始時はほぼ初対面の状態。1日目の朝は上智生同士にも緊張や遠慮が見られました。
福島駅に到着してすぐに撮影した集合写真では、学生同士に少し距離感が感じられます。
「飯舘村立いいたて希望の里学園」では4日間を通して「学習指導」「キャリア支援」「部活動支援」を行いました。「部活動支援」では、7・8年生(中学1年生・2年生)で構成される「バドミントン部」の活動をサポート。9年生(中学3年生)に対しては一対一で勉強を教える「学習指導」に加え、上智生が企画したオリジナルの「キャリア支援」ワークも実施しました。
たった4日間で、生徒に何を伝えられるのか。時には雑談も交えつつ、上智生は生徒と真摯に向き合いました。「どうすれば理解した知識を定着させられるんだろう?」「自分達がいなくなった後も勉強を頑張ってもらいたいね」宿舎に戻った後も、活発な意見交換が続きます。
上智生の思いは、少しずつ生徒に届いていきました。分からない問題をすぐに諦めていた生徒が自力で問題を解ききれるようになったり、暗記の苦手な生徒が学んだ内容を翌日まで覚えられていたりしました。心の距離も縮まり、勉強の合間に趣味の写真を見せてくれた生徒や、自分で作った絵手紙をプレゼントしてくれた生徒もいました。「勉強が好きになった」「これからも頑張るから期待していて欲しい」最終日、生徒達から貰った寄せ書きのメッセージに、涙をこらえる上智生も。
変わったのは生徒達との関係だけではありません。上智生同士の信頼も深まっていきました。出身地や背景も異なり、学校や勉強に対する考えも様々だった9名。だからこそ、少し話すだけで新たな発見が生まれていきました。何気ない移動や食事中にも笑いが起きる瞬間が増えていき、最終日には夜が明けるまで語り合ったメンバーもいたそうです。
夜は星も綺麗に見え、「いつか住みたい!」と言い出す学生さえいた飯舘村。実は、東日本大震災にともなう原発事故の影響で、約6年間の全村避難を強いられた歴史があります。プログラム最終日には飯舘村の村内見学が実施され、上智生は復興への村の歩みを学びました。まずは、災害時に地域住民300人以上を受け入れられる「飯舘村防災センター」と、長泥地区で進む除染土壌の再生事業を見学。その後、震災当時に飯舘村の村長だった菅野典雄さんからお話を伺いました。
菅野さんは、復興に向けて「までいライフ」を目標に掲げてきました。「までい」は「丁寧に」「心を込めて」という意味の方言。村の人々の幸せを「までい」に追求し続けた公平無私の提案が、村の団結を強めて、復興につながったといいます。
4日間、飯舘村の中学生へ「までい」に向き合った上智生達。上智大学と飯舘村の「までい」な交流はこれからも続きます。