2021.09.21
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上智のいまを発見2026.05.29
皆さん、こんにちは。アフリカWeeks学生実行委員です。FIND SOPHIAで連載している「アフリカWeeks2026特集」第4弾をお届けします。今回は、 ガーナでの事業を始めた総合グローバル学部の寺田瑛梨さんへのインタビュー記事です。
Q. アフリカに興味を持ったきっかけは?
(寺田)小学生の頃に所属していたガールスカウトでのユニセフ募金活動です。呼びかけをしているなかで、資料の中に同じくらいの年齢、もしくは幼い子がやせ細っているのを見て、「同じ人間なのに、どうしてこんなに苦しい思いをしなければならない子どもたちがいるんだろう?」と理不尽さや違和感を覚えていました。
高校生になってからは、「アフリカの社会問題解決に関わりたい」という思いを、どう具体的な行動に結びつければいいのか悩んでいました。その時、緒方貞子さんの本で「現場感が無ければ人は説得できない」という言葉に出会い、まずは自分の目で現地を見る必要があると思いました。そこで高1でガーナ、高2でケニアへ2週間ずつ、ボランティアに行きました。
その中で特に印象に残っているのは、ケニアのキベラスラムを訪れたときの経験です。そこでは、都市計画という理由をもとに、住人への予告がないまま住宅や学校が破壊されている現状を目の当たりにしました。その経験を通じて、それまで前向きなものだと思っていた「開発」の中にも、立場の弱い人々が取り残されてしまう現実があるのだと知りました。そして、「本当に公正な開発とは何か」「誰のための開発なのか」と考えるようになりました。大学では、そうした問いに向き合うために、上智大学の総合グローバル学部を選びました。
Q. 留学は経験しましたか?
(寺田)大学3年生を終えた後、大学を休学し、9カ月間アメリカ・シアトルにあるワシントン大学の起業プログラムに参加しました。もともと、留学に行きたいとは思っていましたが、交換留学だと専攻領域であるアフリカの地域研究、国際協力の勉強の延長線上になると考えました。将来的に自分で事業を立ち上げることを考えた時に、留学中は起業に必要なスキルや考え方を学びたいと思い、あえて、交換留学を選ばず、自分で起業について学べるプログラムを見つけて行きました。
Q. 今はどんなことをしていますか?
(寺田)POT3NTIA.合同会社(ポテンシア)という会社を立ち上げて、ガーナで大量に廃棄されているカシューフルーツを活用した事業に取り組んでいます。
カシューフルーツを加工し、市場に届ける仕組みをつくることで、農家さんの新しい収入源を生み出したいと考えています。さらに、これまで価値がないと見なされてきた素材に新しい可能性を見出し、ガーナ国内に雇用や産業が育っていくような循環をつくることを目指しています。
Q. カシューフルーツについて、もう少し教えてください!
(寺田)カシューフルーツは、カシューナッツの下に実る果実のことです。ナッツ1粒に対して、1個のカシューフルーツが付いています。甘く、トロピカルな味わいが特徴で、オレンジの約5倍のビタミンCや、抗酸化物質、アミノ酸などの栄養素を含んでいます。
カシューナッツが成熟すると、果実ごと自然に落下するのですが、落ちた時点で果実は完熟しているため、非常に傷みやすいんです。そのため、収穫後すぐに加工する必要があります。しかし、農村部ではコールドチェーンや加工設備が十分に整っていないこともあり、即座に加工・流通させることが難しく、ガーナでは今でも90%以上が廃棄されている状況です。

Q. 農場や農家はどんな感じですか?
(寺田)農場は激広です(笑)。農家さんは広い農場を歩き回りながら、基本的にはカシューナッツだけを回収しています。
カシューフルーツは、買い取る人や加工する人がほとんどいないため、農家さんにとっては「捨てるもの」という認識が強いです。フルーツが落ちていても、ナッツだけを取り、フルーツはそのまま地面に捨てられています。自分たちで水分補給のために食べることはありますが、大量に消費することはあまりありません。
実際に私が農家さんに「このフルーツを買いたいです」と伝えると、最初は一瞬きょとんとした顔をされました。その後、「え、このフルーツを買いたいの? 本当に? 君は面白いことを言うね!」と笑いながら驚かれました。私にとっては可能性のある果物に見えていたものが、農家さんにとってはあまりにも当たり前に捨てるものだった。その反応を見て、カシューフルーツにはまだほとんど価値が見出されていないのだと実感しました。

Q. そもそも、カシューフルーツを知ったきっかけは何ですか?
(寺田)アメリカ留学中に、ガーナ出身の友人と話していたことがきっかけです。
その友人とは、ガーナで起きている社会課題についてよく話していました。例えば、違法な金採掘による環境汚染の問題や、若者の雇用問題などです。また、私自身、もともと農作物のロスがアフリカ全土で大きな課題になっていることを知っていたので、そのことについても聞いてみました。
その会話の中で出てきたのが、カシューフルーツでした。世界中でカシューナッツは食べられているのに、その下に実る果実の存在はほとんど知られていない。にもかかわらず、栄養価が高く、加工品として活用できる可能性もある。そのギャップに大きな可能性を感じました。
Q. 事業名のPOT3NTIA.(ポテンシア)の由来は何ですか?
(寺田)POT3NTIA.は、「ポテンシャル」という言葉が由来です。
私が大切にしているのは、何か新しい価値をゼロから生み出すというよりも、すでにそこにあるのに、まだ十分に見出されていない可能性に光を当てることです。そして、その可能性が動き出すきっかけをつくりたい、という思いを込めています。
カシューフルーツも、これまで捨てられてきたからといって、価値がないものだったわけではなく、美味しさや栄養価、素材としての面白さが、まだちゃんと伝わる形になっていなかっただけだと感じています。だからこそ、その価値がきちんと届く形をつくることで、農家さんや関わる人たちが、自分たちの土地や素材に誇りを感じられるような循環を生み出したいです。
また、「3」を使っている理由は、ガーナのトウィ語で使われる「Ɛ」という文字に由来しています。現地ではこの文字を携帯などで打つ時に「3」で代用することがあるんです。この事業はガーナで出会った素材から始まっているので、名前の中にもガーナらしさを入れたいと思いました。
Q. 他にメンバーはいますか?
(寺田)日本のメンバーは他に2人います。あとは、ガーナの工場メンバーと農家さんです。
Q. なぜ起業をしようと思いましたか?
(寺田)アフリカの貧困問題に対して、一時的な支援ではなく、現地に収入や雇用が残っていくような仕組みをつくりたいと思ったからです。
大学1年生から3年生までの間に、ブルキナファソ大使館、JICA、NPOでインターンを経験し、様々な形でアフリカとかかわれることを知りました。
それらを通じて、外から支援するだけではなく、もっと地域の人たちの暮らしに近いところで、現地にある素材や人の力を活かしながら価値をつくりたいのだと気づきました。特に、食やものづくりのような手触り感のあるものを通じて、現地の人たちが自分たちで稼げる仕組みをつくりたいと思うようになりました。
そんな中、留学中にカシューフルーツの存在を知りました。この果実は、ガーナで多くが廃棄されている一方で、栄養価が高く、加工品として活用できる可能性があります。活用できれば、食品ロスを減らすだけでなく、農家さんにとって新しい収入源をつくれるのではないか。最初は、そうした仮説から始まりました。
その可能性を確かめたくて、実際にガーナへ行き、100人のカシューナッツ農家さんに話を聞きました。すると、現金収入が少ないために、ナッツの収穫量を増やすための苗や肥料を十分に買えなかったり、新事業を始めるための初期費用がなかったり、教育や医療に十分なお金を回すことが難しかったりする現実が見えてきました。
一方で、実際にカシューフルーツをジュースとして加工して飲んでみると、甘酸っぱさだけでなく、渋みや深みもある、とても面白い味わいでした。農家さんの収入課題と、素材としての可能性の両方を現地で感じたことで、単なる食品ロスの解決策ではなく、新しい収入源や、ガーナ発の新しい価値づくりにつながる事業になるのではないかと確信しました。
だからこそ、今はほとんど活用されていないカシューフルーツを市場につなげ、農家さんの収入源を増やし、ガーナ国内に雇用や産業が育っていく循環をつくりたい。その思いから、起業という形で挑戦しようと決めました。
Q. 学んだことで事業に活かせていることはありますか?
(寺田)総合グローバル学科では、自分の興味関心に応じてメジャーとマイナーを選択できます。そのため、メジャー(国際協力論)では、国際協力論という授業で開発支援、援助について学びました。援助に依存している状況や、汚職の問題を聞き、一時的な解決策だと痛感しました。外からの支援は緊急支援では必要ですが、長期的には現地の人たちが自分たちで運営する仕組みを作り、その後も雇用や産業がその地域に残るようにする必要があると考えました。自分で稼ぐ仕組みを作る重要性やビジネスを通じて貧困問題に携わりたいと思い、起業するという考えにたどり着きました。
一方、マイナー(アフリカの地域研究)では、地域ごとの政治や経済に焦点を当てた授業が役に立ちました。「アフリカ」は一つの大国ではなく、それぞれの国に歴史があり、経済や社会構造も全部違うことを知りました。だからこそ、「アフリカのために何かをする」という漠然とした目標ではなく、自分の事業をやる中でも、ガーナのカシューナッツの産業はどうか、この地域のこの農家さんはどういう暮らしをしているのか、具体的な現場に向き合うことの重要性を学びました。
Q. ビジネスを進める上で難しかったことは何ですか?
(寺田)食品ビジネスとなると、原料調達、加工、品質管理、検査、食品表示のラベル作りなど、学生がゼロから考えるとなると、あまりにも考えることが多かったです。ひとつひとつ地道に調べたり、人に聞いたりしながら進めました。
また、ビジョンや社会的意義だけでは事業は続かないということを痛感しました。どれだけ、社会的意義があっても、商品としての力が無ければ継続できないし、社会的意義だけで人は商品を買ってくれません。だからこそ、「誰が、なぜ、いくらで買うのか」「市場の中でどのような立ち位置を取るのか」を冷静に考える必要があると感じています。お金が続かないビジネスでは、農家さんの収入を継続的につくることも、雇用や産業を生み出すこともできません。
ビジョンや想いを語っているだけでは、理想論に終わってしまうからこそ、どうやって想いを数字にし、事業として成立させるのかが一番難しく、同時にやりがいだと感じています。
Q. 辛かったことはありますか?
(寺田)本格的にビジネスを進める前に、出鼻をくじかれた経験です。
農家さんへのヒアリングや、実際に果実の味を確かめる中で、素材としての可能性と、農家さんの新しい収入源につながる可能性の両方を感じていました。
でも、日本に一時帰国して、事業を始める前にいろいろな人に相談した時に、「学生に食品ビジネスは厳しい」「まずは経験を積んだ方がいい」「人生で一度しかない新卒カードを捨てるのはもったいない」といった厳しい意見をいただきました。もちろん、どれも私のことを思って言ってくださった言葉でした。
現地では確かに可能性を感じていた一方で、食品ビジネスとしての難しさや、自分の経験不足を突きつけられた時に、「これは本当に事業として成り立つのかな」「自分にできるのかな」と一気に不安になりました。自分がやろうとしていることは、ただの理想論なのではないかと思って、かなり悩みました。
その時に、改めて「なぜここまでしてこの事業をやりたいんだろう」と考えました。人生のグラフを書いて、22年間、自分が何にワクワクして、何に悔しさや違和感を覚えてきたのかを振り返りました。すると、小学生の頃から感じていた、自分と貧困地域の子どもたちの生活の差への違和感や、現地に近いところで、手触り感のある形で価値をつくりたいという思いが、自分の中にずっとあったことに気づきました。
就職して経験を積む道も、もちろん大切な選択肢だと思っていました。ただ、自分の中でここまで強くやる価値があると確信しているものに出会えたのに、このタイミングで挑戦せずに手放してしまったら、きっと後悔が残ると思いました。だからこそ、完璧な状態で始められるわけではなくても、現実的な難しさから目を背けず、学びながら、必要な人に力を借りながら、一つずつ形にしていこうと覚悟を決めました。
その時期は辛かったですが、自分がなぜこの事業をやるのかを深く考えるきっかけになりました。今はその経験が、自分の軸を支えてくれていると思います。
Q. 事業をやっていて嬉しかったことはありますか?
(寺田)一番はカシューフルーツのジュースを持って帰ってきて、日本の人に試飲してもらった時です。ほとんどの人が知らない果物のジュースを美味しいと飲んでもらった反応を見て、私が感じた捨てられているフルーツの可能性が少しずつ他の人に伝わっていく感覚がありました。ポテンシャルがあると思った物の魅力が伝わり、その人の表情や言葉に変わった瞬間が嬉しかったです。
また、形にするまでの過程も楽しかったです。ガーナの農家さんや工場の人と話しながら、「どうやったら美味しくなる?」、「どう良いフルーツを選別する?」など共に模索しました。今はまだ小さいけど、こういう循環をもっと大きくしていって、カシューフルーツがガーナの新しい産業や雇用を生み出すようなものになっていけば良いなと思いました。その可能性が見える瞬間がすごく楽しかったです。


Q. これからやりたいことはどんなことですか?
(寺田)短期的には、まずカシューフルーツジュースを商品として完成させ、実際に市場に届けるところまで持っていきたいです。現在は試作段階ですが、味、品質、賞味期限、価格、販売場所などを一つずつ検証しながら、「面白い素材」で終わらせるのではなく、きちんと商品として成立する形にしていきたいと考えています。
中長期的には、カシューフルーツを起点に、ガーナ国内で新しい産業や雇用が生まれる循環をつくりたいです。今はほとんど活用されていない素材ですが、市場につなげることができれば、農家さんの新しい収入源になるだけでなく、加工、流通、販売に関わる仕事も生まれていくと思っています。
最終的には、カシューフルーツが「捨てられるもの」ではなく、ガーナの人たちが誇れる素材として認識され、国内外に広がっていく状態をつくりたいです。まだ小さな一歩ですが、カシューフルーツをガーナの新しい産業の種にしていくことが、これから私が挑戦したいことです。
Q. ガーナの好きなところは何ですか。
(寺田)ガーナには、第2の家族と呼べるホストファミリーがいます。なので、私にとってガーナは、ただ行く場所というより、「帰りたい」と思える場所です。遠い日本から来た私のことを、本当に温かく迎えてくれて、1か月も家に泊めてくれました。「あなたはもう家族の一員だから、いつ来ていいかなんて聞かなくていいんだよ。いつでもおいで」と言ってくれたことが、今でもすごく心に残っています。
しかも、私の写真を家の壁に貼ってくれているんです。そういう人の温かさや、家族のように受け入れてくれるところが、ガーナの大好きなところです。
Q. アフリカや起業に興味のある人に向けてのメッセージをお願いします。
(寺田)アフリカに関心がある人は、まずは、どういう関わり方があるか知るために行動するのが良いと思います。例えば、インターンをする、現地に行く、企業やNGOの方など、幅広く話を聞いてみるといったことが挙げられます。それを通じて、どういう距離感で、何を通じてどんな価値を生み出したいのかということを考えていくことがすごく大切だと思います。その答えは人によって違います。現場に近いところで関わる方が合う人もいれば、ビジネスの力で関わりたい人もいる。国家の制度や国際的な枠組みに関わりたい人もいれば、研究を通じて一つの国やテーマを深く理解したい人もいると思います。大事なのは、周りから見て正しそうな道を選ぶことではなく、何を選べば自分自身が納得して力を注げるのか、それを見つけるのが重要だと考えています。
起業に興味がある人は、完璧に準備ができてから動こうとしなくて良いと思います。私自身、以前は計画を立てて、見通しが立ってからでないと動きたくないタイプでした。でも、ガーナで現地調査をした時は、行ってみないと分からないことばかりで、計画通りにはまったく進みませんでした。
分かったことをもとに仮説を立て、人に話を聞き、加工工場に連絡して訪問してみる。そうやって動きながら考えるしかありませんでした。正直、「これで合っているのかな」と思いながら進むことの連続でしたが、その経験を通して、「完璧に分かってからではなくても、動けば前に進むんだ」と思えるようになりました。一回で正解を出そうとするのではなく、まず打数を増やして、その中で見えてくるものを大切にする。その一歩を踏み出す回数が増えるほど、出会える人も、得られるフィードバックも、広がるチャンスも増えていくと思います。
だから、今の自分にとって少し怖いけれど、気になって仕方がないことがあるなら、まず一歩踏み出してみてほしいです。不完全でも、自分で決めて動いた経験は、必ず自分の軸になると思います。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
同じ大学で、幼少期の頃からの思いを大切にし、地道に動き続け、形にしている学生がいることは励みになると思います。アフリカに興味を持っている人や、起業をいつかしてみたいと考えている学生の参考に少しでもなれば幸いです。
寺田さん、インタビューを受けてくださり、ありがとうございました。いつか、商品化されたカシューフルーツのジュースを飲めることを楽しみにしています。
最終回の第5回は6月5日掲載予定です。内容はお楽しみに!

2021.09.21
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