2022.04.01
読書は知性の筋トレであり、最も手軽な旅でもあり、時には人生を変えることも。各学部の先生から3 冊ずつ「学生時代に出会ってほしい本」を紹介します。価値観を揺るがす学術書から不朽の文学まで。まずは一冊、読んでみては。
(大学手帳『SOPHIANS’ DIARY 2021』より転載)
神学部 神学科 原敬子先生
『チェルノブイリの祈り:未来の物語』スベトラーナ・アレクシエービッチ 著/松本妙子 訳、岩波現代文庫
チェルノブイリ原発事故はインタビューを通して今も我々に物語る。ノンフィクションの地平にある真実に、祈る人間の本当の姿が現れる。2015 年ノーベル文学賞受賞。
おすすめ2│『愛するということ(改訳・新装版)』エーリッヒ・フロム 著/鈴木晶 訳、紀伊國屋書店
おすすめ3│『我と汝・対話』 マルティン・ブーバー 著/植田重雄 訳、岩波文庫
文学部 国文学科 木村洋先生
『それから』 夏目漱石、新潮文庫
明治末の青年たちは、忠君愛国を奉じた大人たちの価値観に真っ向から反抗した。この青年が味わった高揚と煩悶を、漱石一流の明晰きわまる文体で描く名作。
おすすめ2│『身体の零度』三浦雅士、講談社選書メチエ
おすすめ3│『太平記〈よみ〉の可能性』兵藤裕己、講談社学術文庫
総合人間科学部 教育学科 杉村美紀先生
『人間をみつめて』 神谷美恵子、みすず書房
精神医学者として「いのち」と「こころ」を真摯に見つめ続け、人間がもつ可能性と尊厳に限りない思いを寄せた筆者の言葉は、その一つ一つが心に深く響きます。自身の歩む道、他者とのかかわりを考えるたびに、いつも手に取る一冊です。
おすすめ2│『文化の三角測量:川田順造講演集』川田順造、人文書院
おすすめ3│『文化のなかの子ども』箕浦康子、東京大学出版会
法学部 地球環境法学科 羽生香織先生
『養子縁組の社会学:〈日本人〉にとって〈血縁〉とはなにか』野辺陽子、新曜社
親子間には血縁という目に見えないつながりがあると語られる。では、親子にとって「血」が意味するものは何か。なぜ血縁にこだわるのか。親子と血縁の関係について考察する。
おすすめ2│『フランスの同性婚と親子関係:ジェンダー平等と結婚・家族の変容』イレーヌ・テリー 著/石田久仁子・井上たか子 訳、明石書店
おすすめ3│『審判』深谷忠記、徳間書店
経済学部 経済学科 川西諭先生
『マインドセット:「やればできる!」の研究』キャロル・S・ドゥエック 著/今西康子 訳、草思社
「やる気のある子とない子の違いは何か?」を探求した心理学の本です。私は45歳のときに読みましたが、もっと早く読んでおきたかったと思える一冊です。
おすすめ2│『GI V E &TA K E「与える人」こそ成功する時代 』アダム・グラント 著/楠木建 監訳、三笠書房
おすすめ3│『ウォール街のランダム・ウォーカー:株式投資の不滅の真理(原著第12版)』バートン・マルキール 著/井手正介 訳、日本経済新聞出版社
外国語学部 ドイツ語学科 木村護郎クリストフ先生
『自立社会への道:収奪の五〇〇年を超えて』筧次郎、新泉社
大学講師から百姓になった著者による「裏から見た世界史」。他者(人間や生物)の犠牲の上に成り立つ現在の私たちの生活は本当に「豊か」なのかを問いかけてくる。読むと、世界観変わるかも。
おすすめ2│『後世への最大遺物・デンマルク国の話』内村鑑三、岩波文庫
おすすめ3│『愛すること信ずること』三浦綾子、講談社文庫
総合グローバル学部 総合グローバル学科 丸井雅子先生
『告白 あるPKO隊員の死・23年目の真実』旗手啓介、講談社
カンボジアPKO(1992-93)について何を知っていますか。広く平和構築や国際貢献に関心がある人にもぜひ読んでもらいたい一冊です。
おすすめ2│『一つの太陽 オールウェイズ』桜井由躬雄、めこん
おすすめ3│『東南アジア紀行(上・下)』梅棹忠夫、中公文庫
国際教養学部 国際教養学科 林道郎先生
『世界と僕のあいだに』タナハシ・コーツ 著/池田年穂 訳、慶應義塾大学出版会
差別される側にとって「世界」はどう見えているのか。BLM運動の背景にある歴史の積層が息子宛の書簡形式で語られる。淡々とした描写のなかに浸透する深い哀しみと怒りに打たれる。あらゆる差別問題に広げて考えることのできる一冊。原著に挑戦するのもいい。
おすすめ2│『古典の影:学問の危機について』西郷信綱、平凡社ライブラリー
おすすめ3│『おかしな時代:「ワンダーランド」と黒テントへの日々』津野海太郎、本の雑誌社
理工学部 物質生命理工学科 齊藤玉緒先生
『ヒトゲノムのゆくえ』ジョン・サルストン、ジョージナ・フェリー 著/中村桂子 監訳、秀和システム
ヒトの遺伝情報が一つの企業に独占されたらどうなるか?「ゲノムは人類をつなぐ共通の糸」を合言葉に世界の研究者たちが公的研究資金を使って成し遂げたヒトゲノムプロジェクト、その熱き戦いの物語。
おすすめ2│『利己的な遺伝子(40周年記念版)』リチャード・ドーキンス 著/日高敏隆 他 訳、紀伊國屋書店
おすすめ3│『ご冗談でしょう、ファインマンさん(上・下)』R.P. ファインマン 著/大貫昌子 訳、岩波現代文庫