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上智のいまを発見

アフリカWeeks × Sophia – with youth – ④

2025.05.20

大学の中と外で、いまおきているあれこれを紹介する「上智のいまを発見」。毎年恒例の上智大学アフリカWeeks、今年も学生企画メンバーによる寄稿特集をお届けします。第4弾となる今回の記事では、アーティストのインタビューをお伝えします。

第3弾、学生実行委員会の構成に関する記事をお見逃しの方は、こちらよりご覧いただけます。


アフリカWeeks × Sophia – with youth – ④

アフリカWeeks特集も第4弾となりました! 今回は、今年のメインビジュアルに作品をご提供くださった、ペーパーキルトのアーティストである山下哲司様へのインタビューの全貌をお届けします。アフリカでの体験から得たインスピレーションから、作品づくりへのこだわりまで、「ペーパーキルト×アフリカ」にかける想いを伺いました!

Q. アーティストになるまでの経緯を教えて下さい!

高校卒業後、美術大学デザイン科に進学しました。そして卒業と同時に、グラフィックデザイナーとしてデザイン会社に就職し、デザイナーとして経験を積みました。2007年、国際展覧会に作品を出品し、入賞したことがきっかけとなってアーティストの道へ進みました。

Q. アフリカを取り上げるきっかけは?

1990年、22歳でケニアに初めて行った時のことがきっかけです。当時は美術大学の4年生で、あと半年で卒業という時期に1年間休学し、スワヒリ語を習う学校に半年間留学をするという形でアフリカに渡航しました。

アフリカを選んだ理由としては、美術大学では卒業論文の代わりに作品の制作を行うのですが、その題材を動物にしたい、そしてライオンが見たい、という理由だけで渡航を決めました。現地の情報は現地でとる時代でしたから、22歳で初めてアフリカを訪れたときの印象が深く残り、現在のライフワークに密接につながっていると思います。

Q. やはり現地で実際に目にしたものは迫力が違いましたか?

毛並みが全然違いますね! ピカピカ光っていますし(笑)。シマウマもきれいです。日本に帰ってからは動物園にまともに行けなかったくらいでした。

Q. アフリカを初めて訪れて、衝撃的だったことはありますか?

1990年代のアフリカは不自由なことが多く、日本がどれだけ恵まれているかを実感しました。それと同時にアフリカの人々のあたたかさに触れられたことに感動しました。

Q. 具体的には、どのような出来事があったのでしょうか?

タンザニアに行った時のことです。当時は電気がまともに通っていない、蛇口をひねっても少ししか水が出てこないという状況がほとんどでした。安宿で4~5歳の女の子がお風呂を沸かしてくれたのですが、正直に言うととても汚い泥水で、「これを浴びるの?」というお風呂でした。それでも彼女に「ありがとう!」と感謝を伝えると、「あなたが喜んでくれて、私もうれしい!」と言ってくれたんです。他にも、当時はスマホが無い時代だったので道に迷うこともありました。そんな時、近くにいた青年に行き方を教えてもらい、「君が解ってくれて僕も嬉しい!」と言われたことにも胸を打たれました。彼らの言葉に感動してしまって、「今までの自分の考えは何だったのか?」と贅沢な生活を夢みていた自分の考えを顧みて、価値観を変えるきっかけになりました。人の幸せを自分の幸せとして喜べるようになりたい、と強く思うようになりましたね。

Q. ご自身がアフリカで得たインスピレーションを、作品づくりにどのように落とし込んでいますか? また、アフリカを描くうえで、欠かせないことや大切にしていることはありますか?

インスピレーションを作品に落とし込むというのは、これといったものは無いんですよね。ただ、どの作品を制作するときにも共通するのは、常に思っていること、感じていること、「これを表現したい」ということを心に留めながら制作することは大切にしています。そういった自分の考えと、目の前の作品とにブレがないかを確認しながら制作していきます。

また、五感を研ぎ澄ますことも大切です。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、そして触覚は、意識していないと感じ取れなくなってしまうものだと思います。

作業風景

Q. なぜ紙を用いて作品を制作するようになったのですか? ペーパーキルトというアートに至るまでの経緯をお聞かせください!

絵の具という無限に色を生み出せるものではなく、今そこにある色や素材、目で見たものをそのまま写し出せないかと考えた時に思いついたのが、紙で表現するということでした。アフリカで、バナナの皮をちぎって貼る工芸品に出会ったことも、切って貼る作品のイメージに繋がっていると思います。

そして、丸、三角、四角というのは形の基本であってこれ以上崩しようがないという点も重要です。アフリカのデザインを見ると、丸、三角、四角が基本として作られていました。見たものから自分の意図した形をアフリカに近づける、アフリカを継承できる、と考えたのがこの形を用いることでした。

私は日本人ですから、アフリカで創り出されたものをそのまま表現しても、アフリカを表現したことにはなりません。ですから、彼らの生み出した世界を表すためには、見たもの、感じ取ったものを自分の中に取り込んで、自分の作品として作品に写し出すことをとても大切にしています。

制作の様子

Q. ご自身にとってのアフリカとは?

たった一言で言うならば、「いのちの塊」です。生きる源を感じる、生きるという意味を本当の意味で教えられた場所です。アフリカの人たちは皆生きることに貪欲で、食べること生活すること全てにおいてへこたれない姿勢、「パワー」を感じます。

今はもう、私が訪れたときよりも考え方やテクノロジーが発展していると思いますが、当時はアフリカを行き交う人たちの目がギラギラしていて、生きるエネルギーに満ち溢れていました。蛇口を捻れば飲み水が手に入りますし、日本はなんでも簡単に手に入る社会で満ち足りているなあと感じます。ですが当時のアフリカは、必需品の100%が手に入るという状況が少なかったと思います。無いからなんとかしよう! という意気込みを感じられ、精神の強さに心を揺さぶられました。

Q. 今年のメインビジュアルにご提供くださった作品には、どのようなご経験や想いが反映されているのか

奇想天外(ウェルウィッチア)という作品です。この作品は、ニューヨークで個展を開くために、取材として訪れたナミビアでのできごとを描いたものです。

ウェルウィッチアは、砂漠に生えていて、1年間に10センチメートルほどしか育ちません。とても暑く、緑が全く無い、かなり過酷な状況で生きている植物で、葉っぱは石のようにものすごく硬いんです。その葉っぱが太陽に焼かれ、縮れ、それでもタコの足のように広がっていく姿を見ると、この過酷な環境の中で必死に生きようとしているように感じ取れ、あのくすんだ緑の葉っぱの下に、細胞が蠢いているんだ、ということが見て取れました。命そのものが葉っぱの中に輝いているのだ、ということを強く感じたんです。これが制作のキッカケとなりました。

余談ですが、そのウェルウィッチアを見に行く日が、ちょうど東日本大震災の日だったんです。津波の映像を見た後に、砂漠を見たものですから、かなり衝撃がありましたね。

Q. 制作された作品が、アフリカWeeksというイベントを通して来場者に届くことをどのようにお考えでしょうか?

それはもう単純に嬉しいという一心ですね! アフリカへの関心の入口になってくれたら嬉しいですし、イベントが盛り上がってくれたら良いと思っています。アフリカに目を向けてくれる人が増えてくれることを願っていますし、その窓口が自分の作品であればうれしいに越したことはないです!

Q. 最後に、アフリカに関心をもつYouthにメッセージをお願いします!

きっかけはなんでもいいので、できることならアフリカに行ってほしいです。歴史でも良いですし、動物や砂漠への関心からでも良いと思います。アフリカという大陸を訪れることで、そこからストーリーが広がっていくのではと思います。特に砂漠を一度でも見てほしいなと思います。

あとは、なるべく日本のものを持っていかないで、現地の食べ物を食べ、現地の人に触れ、頼って生活してみてほしいと思います。現地で得たものは、ずっと残る。スマホがあるだけで写真が撮れるし、人に共有することもできます。これは私の持論なのですが、違う場所にいる人にリアルタイムで写真も体験も共有してしまうと共有したという事実に満足し、「自分の中に何も残らない」。その場で共有をするのではなく、もっと五感を研ぎ澄ませて、自分の中に感動をとどめておくことが大事だと思います。

ありがとうございました!

【アフリカの太陽】

~余談~

アフリカでおすすめのスポットはありますか?

セレンゲティ国立公園とナミブ砂漠です。セレンゲティ国立公園は、四国4県に匹敵する広さで、地平線がよく見える国立公園です。真っ平らな地面がまっすぐ続く大地の真ん中で、人間ってちっぽけだな、この世界で生きているのは凄いことだな、と感じさせられます。

ナミブ砂漠は世界で一番美しい砂漠と呼ばれています。「ナミブ」はサン族の言葉で、「何もない」という意味です。約8,000万年前に誕生したというこの砂漠の上には、一握りにも満たないであろう生物が暮らし、砂の一粒一粒が降り積もった歴史かのような錯覚に陥ります。

この二つの場所に渡る風を、ぜひ感じ取ってほしいですね。

いかがでしたでしょうか? 何気なく作品を鑑賞することは、見る人の想像力を搔き立て、見たことのない景色を思い描くことにつながり、その土地への憧れが生まれます。ですが、私はこのインタビューを通して、作品に込められた山下さんの当時の喜怒哀楽、そして当時の体験が言語化されていく中で、何気なく鑑賞してぼんやりと描かれたアフリカの景色が、より鮮明に浮かび上がってきたと感じています。この記事を読んでくださった皆さまには、ぜひもう一度メインビジュアルの作品をご鑑賞いただきたいと思います。

次回の第5弾では、上智大学とアフリカの繋がりについてご紹介します! ぜひチェックしてください!

~個展に関して~

山下哲司展 Woman

期間/2025年9月11日(木)~16日(火)
時間/12:00~18:00(最終日は16:00まで)
場所/銀座ギャラリーG2
   〒104-0061 東京都中央区銀座1-9-8奥野ビル1F
   Tel:03-3567-1555

※期間中、作家は全日在廊予定

【生涯の一度の愛】



担当者memo

アーティストのインタビュー、いかがでしたか。今年も色んな学生企画でアフリカWeeksが増々盛り上がりましたね!さて、次ののFind Sophiaでは、いよいよアフリカ Weeksの最終記事になります。見逃しのないようにチェックしましょう。 

「上智のいまを発見」では学生の活躍、耳寄り情報、先生によるコラム、先輩紹介など、大学の中と外でおきているあれこれを特集しています。取り上げてほしい人や話題など、みなさんからの情報も募集中。情報提供は findsophia-co(at)sophia.ac.jpまで。記事形式、ビデオ、写真、アイディアなど形式は問いません。どうぞ自由な発想でお送りください。*残念ながらすべての応募情報にお答えすることはできません。採用させていただく場合のみご連絡をいたします。 それでは次回の発見もお楽しみに。