好きなことを見つける
2024.10.23
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2024.10.23
大学の中と外で、いまおきているあれこれを紹介する「上智のいまを発見」。
普段の授業では知ることのできない学生時代のエピソードなど綴っていただく「先生コラム」の第23回目をお送りします。先生コラムは、教員が次の教員を紹介するリレー形式でお届けしています。
今回は、東大作先生(グローバル教育センター)からのご紹介で、梅宮直樹先生(グローバル教育センター)にご寄稿いただきました。
東大作先生からご紹介いただき大変光栄です。記事を拝見し、東先生の教育と研究への強い情熱の原点を改めて詳しく知ることができました。
私は、滋賀県大津市の琵琶湖のほとりで育ち、18歳の時に東京に来て一橋大学社会学部に進学しました。子どもの頃から、「どうすれば戦争がなくなるのだろう、、」ということに強い関心があり、大学では、異なる民族間の対立や紛争、各国の民族政策や移民政策を扱う梶田孝道先生の国際社会学のゼミに入りました。ゼミでは、ドイツの移民政策、ボスニア・ヘルツェゴビナの民族対立、アメリカの日系移民コミュニティなど様々なテーマについて議論をしていました。
卒業後は、国際的な組織で平和構築につながる仕事をしたいという夢を持ち始めていたので、英語力を身に着けるためにも留学をしようと考え、3年生の終わりから1年間、大学の交換留学制度で豪州メルボルン大学に留学をしました。留学先として豪州を選んだ理由は、大学2年のときの授業でIanという豪州からの留学生と友達になって彼の国に行ってみたいと思ったのと、ゼミで豪州の多文化主義についても学び、現地で学びを深めたいと思ったからです。そして、この留学が私の人生を大きく変えることになりました。
豪州では、英語の学びも多文化主義についての学びも貴重な学びでしたが、何より、多くの友人と出会えたことが最大の幸運でした。メルボルン大学は特にアジアからの留学生が多く、私が入ったInternational Houseという寮にも多くのアジア人留学生がいました。私はずっと日本で生まれ育ち、英語は受験英語しか知らなかったので、最初の半年は、授業もほとんど理解できず、授業をテープレコーダーで録音して寮に帰って泣きそうになりながら聞き直す毎日だったのですが、同じ寮のインドネシアやマレーシアやベトナムからの留学生がいつも助けてくれてなんとか乗り切ることができました。勉強に疲れ深夜にピザをみんなで注文してわいわい食べながら過ごした時間は今思い出しても本当に素晴らしい時間だったなあと思います。
ベトナム人学生からはベトナム戦争後の国内政治の混乱のなかで豪州に移住してきたことを、中華系マレーシア人学生からは、マレーシアには「ブミプトラ政策」というマレー系優遇政策があり、そのために自国での高等教育機会が限られていて留学してきていることなど、それまで知ることのなかった世界のことを学ぶことになりました。あの寮で多くのアジアからの留学生と出会い、彼らのエネルギーと多様性に触れたことが、将来アジアや他地域の人たちと一緒に仕事をしたいという気持ちを決定づけました。
留学から戻って5年生となり、マレーシアの社会経済発展と民族政策をテーマに卒業論文を書きながら就職活動をし、国際協力事業団(現在の国際協力機構、以下JICA)に就職することが決まりました。JICAは、日本政府による低中所得国の社会経済開発のための政府開発援助(ODA)の実施機関です。国際協力の仕事を通じて戦争のない世界の実現に貢献したいと考えたのがJICAを就職先に選んだ理由です。低中所得国の社会経済発展と貧困削減に協力することがアジア地域や世界の安定と平和の実現につながるのではないか、また、国際協力を通じて日本と世界の様々な国の人たちとの信頼関係を強化することもまた日本と世界の安定と平和の実現につながるのではないかと考えたのです。
JICAでは主に、アジア・アフリカ・中南米の各国との教育分野の国際協力に従事し、25年間の勤務の中では、タイに4年間、マレーシアに2年半駐在し、東南アジア各国の同僚との国際協力事業に従事する機会にも恵まれました。その後、国際協力を志している若い方々の背中を押す教育活動に携わることができればと思う中でご縁を得て2022年から上智大学に教員として勤務をしています。振り返ると、大学時代にIanに出会ったことで豪州に関心を持ち、交換留学で豪州に行ったことでアジアからの留学生に出会い、そのことがJICAへの就職につながり、そして今の仕事につながっていることを思うと、すべての始まりは大学時代にあったように思います。
上智大学は多くの出会いの可能性に満ちた場所です。多くの留学生がキャンパスに集い、COIL、実践型プログラム、インターンシップ科目、交換留学など、国内外でグローバルな学びを深める機会がたくさん用意されています。ぜひそういった機会に果敢にチャレンジして多くの人や出来事と出会ってもらえると嬉しいです。きっとそのなかには、皆さんの人生を大きく変えることになる出会いもあることでしょう。
次回は、総合人間科学部・教育学科の小松太郎先生です。先生のご著書『教育で平和をつくる:国際教育協力のしごと』(岩波新書)を中高生時代に読んで、先生のもとで勉強したいと思って上智大学を受験したという学生さんにこれまで何人も出会ってきました。どのような学生時代を経て、国際教育協力のキャリアを歩まれてきたのか、ぜひご紹介いただきたいと思います。
梅宮先生から小松太郎先生(総合人間科学部・教育学科)をご紹介いただきました。次回の「先生コラム」もお楽しみに。
2024.10.23
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2021.11.04
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