2022.11.22
2022.11.22
大学の中と外で、いまおきているあれこれを紹介する「上智のいまを発見」。
普段の授業では知れない学生時代のエピソードなど綴っていただく「先生コラム」 の第6回目をお送りします。先生コラムは教員から次の教員をご紹介いただくリレー形式でお届けします。
今回は、山﨑瑛莉先生(グローバル教育センター)からのご紹介、国枝智樹先生(新聞学科)です!
山﨑先生からバトンをいただき、コラムを担当する文学部新聞学科の国枝智樹です。山﨑先生とは大学院生時代、藤崎一郎先生(元上智大学特別招聘教授・元駐米大使)のアシスタントを一緒にしていました。博士論文を書きながら米ジョージタウン大学と共同で開催した上智大学創立100周年記念シンポジウムの運営に関わった経験は良い思い出です。
大学時代にできてよかったことに、自分探しがあります。私は日本人とスイス人のハーフで生まれたのはベルギー、引っ越しを繰り返して高校卒業までに5か国7都市に住みました。私のように親や住んでいる土地の文化とは異なる文化で育った子どものことをサード・カルチャー・キッド(TCK)というようです。白人と黒人の間に生まれ、ハワイやインドネシアで育ったオバマ元米大統領もTCKでした。複雑なルーツを持つ身として、自分のアイデンティティについて考えたのが大学時代でした。
上智大学法学部国際関係法学科に入学後、法律は意外と身近なものだと学びましたが、特に国際政治や国際経済の講義に興味を持つようになりました。日本やアメリカの政治や経済を学んでも特に何も思わなかったのに、不思議と国際政治や国際経済の話では子どもの頃見た風景や各地の学校で経験した物事を思い出しました。少しずつ、自分が一つの国ではなく、複数の国の政治的、経済的、文化的、歴史的文脈の中で育ってきたと意識するようになりました。
イラクで通った小学校から転校する原因となった湾岸危機、ベトナムで通った中学校の韓国人同級生が帰国する原因となったアジア通貨危機、ベルギーで通った米国防省関係の高校(DoDDS)が一週間閉鎖される原因となった911同時多発テロ。自分の友人関係や学校生活に変化をもたらしたこれらの出来事には多くの国がからむ、複雑な背景があることを講義や図書館で学びました。
アイデンティティの悩みの一つに、言葉の問題もありました。同世代の日本人ほど日本語は使いこなせず、英語も英語圏の人ほど使いこなせない。自分は二つの言語を使うバイリンガルなのか、いずれの言語も中途半端なセミリンガルなのか。学生時代に通訳学校に通ったり、難民支援団体で外国にルーツのある子どもたちの学習支援ボランティアをしたりする中で、言語を使える/使えないの評価基準は立場や仕事、状況次第で、各々が使う表現やアクセントなどもその人のルーツを反映した個性として捉えられるようになりました。
大学を卒業する頃にはアイデンティティで悩むことが減りました。自分のルーツや個性を様々な文脈や言葉で語れるようになったからかもしれません。TCKに限らず、講義や学内外での経験を通して自分について知るのもまた、学生時代にできる面白い経験なのだと思います。
次のコラム執筆者には基盤教育センターの鎌田浩史先生を推薦します。学内の多くのプロジェクトに取り組みつつ、2022年度から必修化されたデータサイエンスの講義も担当されています。
国枝先生から鎌田浩史先生(基盤教育センター)をご紹介いただきました。次回の「先生コラム」もお楽しみに。
2022.11.22
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