2021.08.30
こんにちは! 地球環境法学科のもっちーです。
配信日は7/17ということで、この記事が配信される頃には期末試験期間の超直前……。先週のちはる記者の記事の冒頭で、「新入生の皆さんは、課題に追われて夏休みが待ち遠しくなってきた頃だと思います。」という文言がありましたが、2年生の私も夏休みを待ち遠しく思っている人の1人で、指折り数えて夏休みが来るのを待っています。
テストよ、永遠に訪れないで……(泣)
さて、今回は上智大学の性の多様性への取り組みについての連載、第二弾として2号館に設置されているインクルーシブトイレについて、インタビューを中心にお届けします!
ぜひ最後まで読んでいってくださいね。
第一弾はこちら!
#364-1 Tokyo Prideを通して学ぶ、上智と性の多様性についてもっと知りたい、LGBTQ+のこと | FIND SOPHIA
1. インクルーシブトイレとは?
インクルーシブトイレは、すべての人が利用しやすいように設計されたトイレです。
従来のバリアフリーや多目的トイレの枠を超え、身体的・認知的・心理的な多様なニーズに対応しています。障がいのある方や高齢者、LGBTQ+の人々、子供を連れている人など、従来の設計では配慮が不足していた人々も含めて利用が可能です。
2. 上智のインクルーシブトイレ
そんなインクルーシブトイレが、上智にも設置されているということを皆さんは知っていますか?
実は、2024年にオープンした2号館4階の「Breeze Lounge」の一角に設置されています。

写真を見たら「これのことか!」となる人も多いのではないでしょうか。教室や自習スペースに向かう時に見かけたことがある人も多いと思います。
私自身、以前から何度も目にしたことがあったものの、何の空間なのかは知りませんでした。授業でインクルーシブトイレについての話題が出たときに初めて、「ここがそうなんだ!」と気づきました。また、周りの受講生も初めて知ったというような反応をしている人が多く、私と同じように、見かけたことはあるけれど、どういう場所なのかは知らないという人が多いように感じます。
そこで、このインクルーシブトイレについてより深く知り、より多くの人に発信すべく、設置に携わった部署の方々に取材をしてきました!
3. 設置に携わった部署の方々への取材
今回取材を受けてくださったのは、環境整備グループの飯田巧さんとダイバーシティ・サステナビリティ推進室の藤野圭さんです。ここからは取材の様子をお届けします!

Q. インクルーシブトイレを設置することになった背景や、設置にいたるまでの経緯を教えてください。
(飯田さん) まずは学生団体の方から理事長・学長宛にインクルーシブトイレの設置に関する要望書が提出されたことが始まりです。これを受けて、学内の方でも実際に検討しましょうという話になりました。
上智にとってインクルーシブトイレは初めての設置だったので、具体的にインクルーシブトイレとはどういうものなのか、何を示すのか、何が正解なのかというところを模索するために、衛生陶器メーカー複数社への訪問・ヒアリング、実際の事例をいろいろ見たりして勉強したというのが経緯です。
性的マイノリティの人を含めて、誰でも快適に使えるトイレというふうに言ってしまえば、その通りなのですが、その答えは多様で、人によって感じ方は異なります。性的マイノリティの方にとってはまずアウティングを避けるための配置検討が必要と考え、専用のトイレを目立たないスペースに設置するという解決策もあるのですが、目立たなくさせようとすることで逆にアウティングにつながることも考えられるため、本学の場合は真の意味でのインクルーシブトイレとして誰もが自由に使える特別なトイレを設置しようという方針に至りました。
Q. 設計を決める際に、考慮した点や工夫した点はありますか?
(飯田さん) プランについても何度も検討しました。
まずは、プラン1。画一的なトイレをいっぱい並べて、すべて男女兼用のインクルーシブトイレで、誰でも使っていいとする。大阪万博に設置されたインクルーシブトイレでもこの形式はありましたけど、そこでは真ん中にパウダーコーナーがあって、そこはトイレを利用した後に老若男女問わず、みんながそこで手を洗うという形でした。プラン1はブース内に手洗いを設けていますが、それと似ています。ただすぐ隣で知らない異性の方が入っているのは、ちょっと抵抗感を感じる人もいます。
そこで、少し広めに個室の間隔をとって、入り口を少し斜めにしてある程度スペースを設けて、その中で手洗いや見繕い等も完結するようなもう少し設備的に整った空間にします。壁には連続性があるものの、個室間の隔壁に空間があることで、音が伝わりにくいというのを配慮した形がプラン2です。
その次のプラン3というのが、今のインクルーシブトイレのプランに近いのですが、壁の連続性をなくして完全にブースを離してしまう。そうすればプライバシーが確保できるようになる。その代わり、各個室の必要面積が広くなるので、設置可能ブース数が少なくなる。
学生職員と限られたスペースでなにを優先すべきかを何度も議論して、今の結論に達しました。そして、学生職員と協議・検討した基本方針を元に、設計事務所さんへ詳細設計を進めてもらいました。

(飯田さん) また、車椅子が通るための幅の確保や、安全を担保するということで、死角を作らないという点も検討しました。行き止まりや人が見えない場所をなるべく少なくし、ブースの位置を工夫して視線が通るように計画、それでも不十分な部分には防犯カメラを設置する等対応しました。
誰でも通れるような場所になるというところで、防音にはとても配慮しています。逆を言うと音が漏れないので、機密性が高くて中が密閉されます。なので、中にはエアコンをつけています。さらに、中で人が倒れてもその音が外に聞こえないというリスクがあるため、各個室の中にブザーを設けて、これが守衛所に通報されるよう設定しています。
Q. 設置を検討する際に、特に重視した考え方やこだわった点はありますか?
(藤野さん) このトイレだけではなく、4階全体をBreeze Loungeという形で一体を開発したことです。いろんなゾーンがあって、そのゾーンの中の 1つがトイレだというふうに作っています。しかし、誰でも使えるトイレというコンセプトではあるものの、トイレだけが目立ってしまうと、逆に利用しづらくなるという声もありました。
それを受け、2号館4階が誰もが集えて、心地よく過ごせるエリアと捉えて、その中にはみんなが勉強しているようなラウンジや、くつろげる場所があり、誰でも使えるトイレがあるという形にしたのが、とても大切なこだわりです。
Q. 次にその設置後の学生や教職員からの反応や意見は、どのようなものが寄せられていますか?
(藤野さん) 利用感アンケートをとり、大体7割の方が満足をしているという結果が出ました。一方でトイレに関しては、ランプで人が入っているのか、入っていないのかが分かるように表示しているのですが、それが最初は分かりにくいというような意見はありました。そこで、ランプの解説をつける改善を行いました。
(飯田さん) さらに、現地に案内も設置しました。元々はあまりオープンに「ここは皆さんが利用できるインクルーシブトイレですよ」と大々的にアピールしていませんでした。オープンにしすぎるのも配慮として良くないだろうと考え、口コミじゃないですけど、実際に教室やトイレを利用する中で、自然に認知をしてもらえたらいいなと考えていました。しかし、認知度が低いことが利用者アンケートでも確認されたので、このトイレがインクルーシブトイレであることを現地に掲示することにしました。

Q. インクルーシブトイレ以外に、上智大学で行っている性の多様性に関する取り組みはありますか?
(藤野さん) 様々な取り組みを進めていますが、一つ例を挙げるとすれば、「上智大学DEI&Bハンドブック」を発行しています。大学のホームページからご覧いただけるので、それを見ていただけると、大学の取り組みについて具体的に知ることができると思います。
例えば、性別情報の収集や氏名の変更、健康診断での配慮など、様々な学生向けや職員向けの取り組みや制度をまとめていますからぜひ手に取っていただきたいです。
Q. 設置までの過程で一番大変だったことを挙げるとしたら何ですか?
(飯田さん) 誰も答えを知らないものの答えを出すというところが、一緒にやってくれた学生職員も含めて一番難しかったのではないかなと思います。正解がない中で「これが正解です」と胸を張って言わなきゃいけない。それがどれだけ大変なことか、多分学生職員の皆さんが一番理解してくれたんじゃないかなと思います。
(藤野さん) 答えがないので、やっぱりいろんな意見があると思います。でも最終的には何かの形にしなきゃいけないわけですので、すごく大変だと思います。ただ、こういった様々な意見や立場の人がいるという事実を受け入れるプロセスそのものこそ大切なことと思います。簡単にスパッと決まることでは絶対ないので、それと向き合っていくことが必要なことだと感じます。
Q. 上智生に伝えたいことはありますか?
(飯田さん) キャンパス整備は利用者皆様、大学であれば学生・教職員皆様の要望に対応していくことが必要だと思っています。教室にしても食堂にしても、施設管理者が一方的に決めるのではなく、大学に必要な施設が何かを様々検討しています。そのため、皆さんからの意見を吸い上げていくことも非常に大事です。
手続きなどで時間がかかってしまうのは申し訳ないのですが、踏むべきステップというのは学内でしっかり踏まなければなりません。
かといって、時間がかかるからと諦めずに、ぜひ必要なことは声を上げてほしいですし、私たちも可能な限りそれに応えていきたいと思っています。
(藤野さん) 私たちの理想は、何か物事を決めるときに誰もが当たり前に、”ダイバーシティやサステナビリティなどの観点ではどうか”という判断基準を持つ社会になることです。
実現にはきっと時間がかかりますが、ダイバーシティやサステナビリティの問題が、どこか遠いところで、関心がある誰かがやることではなく、誰しもが普通に考えるようになってほしいと思っています。
ですので、あまり興味関心がない人がどうしたら考えてくれる機会を持つのかをよく室内で話し合っています。
学生さんの皆さんにお願いしたいのは、今回も、学生団体が要望書を出してくれたことが発端ということがあるので、行動することで、大学を変えることができることを知ってほしいです。
また、上智大学では、今回のBreeze Loungeもそうですが、コーポレートPPA*なども含め、他大学に先駆けて新しい挑戦をしています。他大学が参考にしている事例もあり、そういう新しいことに挑戦する姿勢は本学の大きな魅力の一つだと私は思っています。学生の皆さんにもぜひ知っていただけたら嬉しいです。
*上智大学四谷キャンパスにオフサイトフィジカルコーポレートPPAを活用した再生可能エネルギー由来の電力を導入します|上智大学
4. 最後に
いかがだったでしょうか?
答えがないものに答えを出さなければならないことの難しさを、取材を通して痛感しました。今設置されているインクルーシブトイレには、様々なヒアリングや議論を踏まえて、たくさんのことを検討した多くの方々の尽力によって作られたものだと知り、関わったすべての方々への深い敬意を抱きました。
そして何より、インクルーシブトイレの設置のきっかけは学生団体からの要望書の提出だったということで、学生である私たち一人ひとりに、もっと快適に学生生活が過ごせるよう大学を巻き込んで大きな変化をもたらすことができる力があるのだと思いました!
ぜひ皆さんも、改めて自分の身の回りの環境を見つめ直してみてくださいね。
最後になりましたが、快く取材にご協力してくださった飯田さんと藤野さんに、心より感謝申し上げます。
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