四谷だいえい百席に行ってみよう
2024.05.24
先週の水曜日、遂に関東地方は梅雨入り。忌々しい雨季の気候は、しかしながら、来るべき夏へのカウントダウンが始まったことを我々に教えてくれます。
明日からはいよいよサッカーの祭典も開幕。ロシアに負けじと盛り上がる6月のソフィアトピックスは、夏のビッグイベントに向けた記事を毎週掲載。今週はその第2弾です。
今年は7月5日の木曜日に行われる上智浴衣デー。もう学外でも不動の知名度を獲得した上智の夏の風物詩、おそらく、「入学前から楽しみにしてました!」なんて新入生の皆さんも多いのではないでしょうか。そして「今年も!」な人も、「今年こそ!」な人も、「いや別に…」なんて思ってるもったいない人も、みんなでモラトリアムを味わえる最高の機会なんです。
ですが、そこはやはり浴衣。普段から馴染みがある人の方が珍しくて、着方がやっぱり難しい。毎年浴衣デー当日には、着付けのボランティアの方がソフィアンたちのおめかしに大変なご尽力をしてくださっていますが、まあ自分で着られるに越したことはありません。
そこで、今回は浴衣デー当日のボランティアとしても活躍されている上智大学和装サークル“和心” (twitter: @wagokorosophia) の皆さんにご協力いただき、ひとりで浴衣を着つけるためのやり方を教えていただきました。
女子編、男子編に分かれているので、めちゃくちゃ長いですが、最後まで見てくださいね。
それは、浴衣デーの端っこで密かに起きる、一夏のラブストーリー…
あれから2年が経った。一度忘れたはずの記憶が、蘇った。
ぜんぶ夏のせいだ。もう誰にも頼らない。そう心の中に言い聞かせたくて、自分で浴衣を着ることにした。
① そんな胸の内を覆い隠すように、真っ白な肌襦袢をそそくさと着込む。浴衣を手に取る。
背中心(背縫い)に合わせて半分に折り、襟の部分にあたる線でつまみ、背中に這わせながら着る。
② 胸の前にできた線を押さえ、もう片方の手で後ろにある背中心を引き下げる。
この時、首の後ろに彼の… いや、自分の拳一個分のスペースを作らないといけない。
③ 腕を下げ、腰の位置くらいから浴衣を引き上げる。ここで足元の長さを調整する。
だいたい基準はくるぶしくらいまで。
④ いよいよ浴衣を重ね合わせる。言わずもがな、浴衣の基本は、「左が上、右が下」。
まずは右の太ももがカバーできる位置を確認した後、右側を身体の中にしまい込む(浴衣の下の方がはみ出さないよう、気持ち上げ目で)。そして左側をその上へ。私は今、浴衣というオブラートに包み込まれた。
⑤ 腰紐を結ぶ。万感の思いを込めて、とにかくきつく締め付ける。最後は、半分蝶結びをするような感じで結び、余りは括り付ける。
女性が浴衣を着る上では、この最初さえちゃんとしておけば、着崩れの心配はそうないのだという。恋愛とは大違いだ。私たちだって最初は、あんなに思い合っていたのに。
⑥ 脇の下あたりにある穴から両手を浴衣の中に入れ、おはしょりを整える。その後、鎖骨の間にあるなんか押さえられたら苦しいくぼんでるやつに合わせ、襟合わせをする。
この時、腰紐のあたりで余ってしまっている部分があれば、中に折り込む。
⑦ 2本目の腰紐は胸の下で結ぶ。もうさっきみたいに、きつく巻き付ける必要はない。結び方はさっきと同じなんだけど。
⑧ さあ、あとは帯を残すのみだ。でもみんなと同じ結び方にするのも嫌だし、ちょっとオリジナリティを出してみよう。そうすれば、誰かが見ていてくれるかもしれないし…。
まず「伊達締め」と言われる1本目の帯を2本目の腰紐の周りに巻き付け、背中で交差させる。そして上になった方を半分裏返す。そのまま前に移り、「半蝶結び」の要領でしまう。
⑨ 両腕で反対側の脇を引っ張る。こうすることで背中のしわがなくなる。
⑩ 2本目の帯は、まず45°に2回折り、その後正方形に折ったところで、その線から もう一度45°折る(写真見て!)。
⑪ 折った部分を左肩にかけ、残りの部分を時計回りで2周巻く。その後、左肩に置いておいた部分を身体の右下に持ってきて、残りを半分の幅に折る。
⑫ 両側に2つの持つ部分ができた。おそらく左手前の方が長いので、それを上にしてクロスさせる。
⑬ 2つの持ち手が上下関係になった。ここで半分にしていた幅を元に戻し、長い方を2つに折って、それを下から右腰のあたりに持ってくる。
そうすることでその間にスペースができるので、そこに短い方の持ち手を入れる。
やっとできた…。
私もひとりで浴衣を着られた。今年の浴衣デーは、なんとなく自信を持ってメンストに行ける。
でも、私のことを、私だけのことを見ている人は、果たしているのだろうか。
2年前のことは、今でも鮮明に思い出せる。
正直、浴衣なんて、もう着たくもない。見たくもない。あの時のことは、一瞬たりとも、忘れたことなんてないのだから。
今日、こうして浴衣を着ようとしているのだって、無責任な友だちが「もう忘れろ」なんてしつこく言うからに過ぎない。あの時みたいに浴衣を着て、次の出会いを探せと言われたって、本当は惨めな気持ちになるだけだ。
でも、浴衣を目の前にすると、なぜだか心が高揚しているのがわかる。楽しかったからこそ、今は辛くなった思い出が、大きな波のように胸の中へと押し寄せてくる。
実は男の浴衣の着方と言っても、女のそれと大きな違いがあるわけじゃない。
ポイントは
女子と違って手順は少ないが、その分身体にフィットさせることが難しい。腰紐を結んだところで、浴衣を少し上から引っ張ってきてあげると尚良くなる。
そして、もちろんこれは手抜きなどではない。写真を使いすぎて記事の容量が厳しくなっているという問題もあるが、本当に大して変わらないのだ。
変わってしまったのは、俺たちの関係だけ— — —。
生憎の雨が降ってきた。それはまるで、2年間心の中に漂い続けた、「見栄」という名の気持ちの汚れを洗い流してくれるかのような、しっとりとした雨だった。
傘など持っていなかった。晴れた空の下、いつもの友だちと、いつものように華やかに過ごす1日だけを思い描いていた。
大きな木の下で雨宿りをした。止みそうにないな。強まる雨音の中に、足音が聞こえた。
彼は、いてもたってもいられなかった。やっぱり、忘れることなんてできない。
2年間の忸怩たる思いが、その足から迷いを奪い去った。
「入りなよ」
…
素直に顔を見つめることはできなかった。
でも、浴衣の下に隠した心は、絶対に嘘をつけなかった。
浴衣デーに始まるラブストーリー、また、ここから。
というようなことは全く起こす必要はありませんが、7月5日はぜひみんなで、浴衣を着て盛り上がりましょう!
ライター
新聞太郎
アシスタント
カトウソ
ニッキー