2021.09.29
こんにちは、あさかです。
10号館といえば講堂。
なのですが、それだけではないって知っていましたか?実は3階から上には様々な研究科や機関があるんです。
そこで今回は、一学生の視点から「10号館内に設置されている機関」のうち「多くの学生にはなじみが無さそうだけど、活動を知りたい!」と思った3つの部署の方に取材をさせていただきました。
まずお話を伺ったのは、
実践宗教学研究科・グリーフケア研究所 職員の藤原さま。
――どういった研究科・研究所?
まずグリーフケア研究所は、2005年の尼崎の脱線事故を機に、遺族の方々への対応をするために、2009年に兵庫の聖トマス大学で立ち上がった研究所です。その後聖トマス大学が学生の募集を停止したことに伴い、上智大学に移りました。遺族の悲嘆を和らげるための活動をするために、神父や、シスター、ケースワーカー、臨床心理士など以外に悲嘆に寄り添える人材を養成するという使命を担っています。
実践宗教学研究科は、研究者を養成するため、大学院として2016年に現在の所長・島薗進先生を中心に立ち上げました。グリーフケアというよりは大きな意味の宗教学の中からさらに、臨床の現場に近いもの、フィールドワークと密接につながった実践宗教についての研究科です。
――学んでいるのはどんな方?
医療や看護、福祉、教育、宗教関係(僧侶や神父)など、人に寄り添うことを主に仕事にしている人が、さらなる学びの習得やご自身の仕事のブラッシュアップのために年代も20代から70代まで幅広い方々が来ています。
大学院は8割近くが社会人で学部卒業後すぐ進学する人は約2割。上智大学からの進学者は神学部出身が多く、その他にも文学部、外国語学部出身者がいます。死生学プログラムというものが全学部生に提供されていて、これをきっかけに大学院に入学する人もいます。
――死生学プログラム?
上智には実践的な宗教に関する学部が無いので、そういったものを学部時代に勉強したいという人向けのプログラムです。様々な学科の科目を系統だててとることで、履修証明をお渡ししています。
上智大学は神学部がありますが、どうしてもキリスト教がベースになってしまうので、宗教を全般的に勉強したい人はこのプログラムを探してくるようです。
――今後目指すものは。
まず大学院については、博士後期課程を設置し研究者の育成を目指しています。自分の職業のベースがある人が入学し、再び現場に戻っていくことが多いと言いましたが、博士後期課程まで作ったということは、実践宗教学を深めて研究する人材を増やそうという意図があります。
また、宗教学の研究者は若手が少ないので、その後継者を育てるのが大きな目標です。
グリーフケア研究所については、様々な人々の悲嘆について寄り添えるような教育を受けた人を輩出していくことです。
現代日本では家族構成が変化していて、家族やかけがえの無い人を亡くしたりするような悲しい出来事が起きたときに、家族や周りの人だけでは癒しきれないことがあります。そうした時に、寄り添える人が必要なのです。
藤原さま、ありがとうございました。
「宗教」というとそれを信仰している人だけが関わるような印象がありますが、広く社会に果たす役割があり、それを学べる場所が上智大学にあるということがわかりました。
お話の中にあった通り、学部生で興味がある方は死生学プログラムという形で体系的に学ぶことができます。ぜひ『履修要覧 2019年度 〔共通編〕』166ページをチェックしてみてください!
次にお話を伺ったのは、
Writing Centerをご担当されている国際教養学部准教授の岡田華子先生です。
――何をするところですか?
アカデミックライティングの経験者がチューターとなり、学生のライティングスキルを育てるところです。50分のセッションの中で、チューターからアカデミックなアドバイスをもらえます。
ただ、いわゆる添削サービスではありません。例えば同じようなミスを何回もすれば、チューターが「ここの名詞と動詞が合っていませんよ」と指摘はするのですが、その原稿に書き入れるのは文章を書いた本人です。あくまでも書き手自身の進歩と上達を目指すプロセスなので。
――利用するのはどんな方?
国際教養学部のWriting Centerなので、国際教養学部とグローバル・スタディーズ研究科グローバル社会専攻という大学院のプログラムの学生のみ利用できます。
利用目的は、授業の課題の推敲だけではなく、英文の履歴書を作成する、インターンシップや留学の志望動機のカバーレターを書くといったものもあります。
――Sophia Writing Center設置の経緯を教えてください。
元々、国際教養学部の前身である比較文化学部が市谷キャンパスにありました。当時「特色ある大学教育プログラム」として文科省の助成を受け、今はもう名誉教授になられたロバート・ウィトマー先生が中心になってWriting Centerが設置されました。
今はWriting Centerは珍しいものではなく、他大学でも設置されているのですが、日本では上智大学と早稲田大学が早期に導入しました。そのことを受けて現在も他の大学からもよく見学にいらっしゃいます。
岡田先生、ありがとうございました。
Sophia Writing Centerは日本の大学の中でパイオニア的存在であり、今年の2月にはアジアのWriting Center学会が上智で開催されたそうです。
英語でアカデミックな論を展開するスキルは多様なバックグラウンドをもった人と協働していく上で必要不可欠だと思うので、こういった機関があるというのは心強いですね。私は国際教養学部生ではないので利用できませんが……。
最後にお話を伺ったのは、
ダイバーシティ推進室 職員の近藤さま。
――設置の経緯を教えてください。
元々は「女性研究者支援モデル育成」事業という、国からの補助金で女性研究者を支援するためのプロジェクトを行っていましたが、そのプロジェクト終了後この取り組みを継続するため、上智学院の中に「男女共同参画推進室」という部署ができました。
2017年には “多様な人々が共生できる社会”を多角的な形で推進していくことをめざし「ダイバーシティ推進室」と改称し、活動の幅を広げました。
「女性活躍推進」「ワーク・ライフ・バランス」「マイノリティ支援」「ダイバーシティマインドの醸成」の4つを柱として活動しています。
異なる文化、状況、立場の人たちがこの大学の中で一緒に学んでいますが、ダイバーシティを理解し、共存していけるよう様々な活動を行っています。また上智大学はイエズス会が設立した大学ですが、「他者のために、他者とともに」という上智大学の教育精神が根本にあり、ダイバーシティの取り組みと非常に密接につながっていると考えています。
――「コモンスペース」について
ダイバーシティに関係する図書の閲覧・貸し出しができます。国立女性教育会館(NWEC)が取りまとめているサービスで、3か月に1度、ダイバーシティに関する書籍を100冊ずつ入れ替えて提供しています。
――ダイバーシティウィークについて。
毎年11月25日から12月10日までダイバーシティウィークというイベントを開催しています。意外と一般の学生さんは知らないのですが、多くの学生さんたちが関わって様々なイベントをやっています。国連の女性への性暴力を撤廃する日、人権週間、障害者の日……と、この期間に向けた取り組みをしています。
もうすぐ全体のチラシができますので、是非参加してください。
――学生に向けて伝えたいことはございますか。
一人ひとりが自分らしく生きることを実現したいと思って、大学で学んでいると思います。長い人生の中では、自分の限界のようなものを感じる時もあると思いますが、社会の仕組みの中で生きづらくなってしまった時に、少しでもそれらを取り除き、自分らしく生きていけるような取り組みを進めていきたいと思っています。
そのためには、自分らしく生きることとともに、相手のことを知ること、理解することを推進していけたらいいかと思っています。
近藤さま、ありがとうございました。
ダイバーシティの推進というと「マイノリティの立場にある方に関わること」というイメージがありましたが、「一人ひとりが自分らしく生きられるような働きかけ」ということで、全ての立場の人に関係があるものだと感じました。
コモンスペースにある書籍は誰でも利用でき、図書館に無いものもあるとのことです。関連するテーマでレポートを執筆する際にはぜひ足を運んでみては?
取材にご協力いただいた皆さま、ありがとうございました。
10号館が講堂だけの場所ではないということがおわかりいただけましたでしょうか?!
10号館に限らず、上智大学は四谷キャンパスに様々な機関がぎゅっと詰まっていて、気軽にアクセスできるというのが魅力だと思います。
日々の授業や課外活動だけではない、上智大学の魅力をお伝えできていたら幸いです。
それでは次回もお楽しみに!