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上智学生記者クラブ通信

〈号外〉芸術で、ウクライナに出会う
映画上映会は6月29日

2022.06.17

こんにちは、れいれいです。6月30日まで開催されている「アーティスティック・ウクライナ」。ウクライナの芸術に焦点を当てた写真展・短編映画上映会です。

写真展は、2号館1階メインエントランスとカトリック・イエズス会センターで6月30日まで。ウクライナで活動する若手写真家たちが、侵攻開始後のキーウやハルキウ、マリウポリを独自の視点で切り取った作品51点が展示されています。

2号館1階メインエントランスの展示の一部。

6月29日に6号館101教室で開催される映画上映会では、ウクライナの女性監督による6つの短編映画を上映予定。入場無料で、学内外問わず誰でも鑑賞できます。記事の最後に掲載しているリンクから、事前登録が必要です。

写真および映画の配給を行うのは、ウクライナの映画業界における女性のエンパワメントに取り組む団体「Ukrainian Female Film and Media Industry(UFFI)」です。UFFIが配給する作品は、今後アジアやヨーロッパの各地で展示・上映される予定。上智大学のアーティスティックウクライナが、世界に先駆けての開催となりました。

アーティスティック・ウクライナを中心となって運営しているのは、共に2021年に国際教養学科を卒業した酒井有理弥さんと相馬綾乃さんです。

酒井さん(左)と相馬さん(右)。写真家Nika Fadeevaさんの作品「マリウポリ市民」の前で。

芸術を通して知るということ

ウクライナ出身の酒井さん。多くの日本人が、侵攻以降の報道によって初めてウクライナを話題にするようになったと感じており、「マリウポリもキーウも、普通の人たちが平和に暮らしている、とても綺麗な都市でした。『ウクライナ=破壊』と結びつけないでほしいです」と言います。だからこそ、芸術を切り口にウクライナを知る機会に可能性を感じているのだそう。

研究の中で、日本で暮らす各国からの難民と話す機会があるという相馬さん。「ある国で戦争が起きると、その国についての記憶が瓦礫など悲惨なイメージで定着しまうことが多いです。報道を見るのが辛くて、情報を避けたくなってしまうこともあると思います。そうした状況下で、その国の芸術の存在を忘れないこと、芸術を通してその国で何が起きているかを知ることは素晴らしいことだと思います」と話します。

写真で「感情」にふれる

写真展には、報道写真とは少し違った角度からウクライナの今を写した作品が並びます。酒井さんによると、「ウクライナ人の今の感情を芸術で表現している写真」に出会えることが、この写真展の特色なのだそう。

キーウ出身の写真家Nika Fadeevaさんの「マリウポリ市民」は、マリウポリから西ウクライナに逃れた母子の生活を収めた9枚の写真で構成されています。マリウポリからの脱出を語った母親の言葉が「マリウポリの物語」として詳細に記録されており、写真と共に読むことができます。

Nika Fadeevaさんの「マリウポリ市民」から「マリウポリからの脱出を語るダーシャ」(画像提供:UFFI)。6歳の息子と共に避難した経験を語る母ダーシャさんを写した1枚です。

「報道では、ウクライナの状況の全体像を見ることが多いと思います。Fadeevaさんの作品を通して1組の親子の生活にふれることで、『自分がこの状況に置かれたらどうするか』を考えさせられます」と相馬さん。一見「普通」の暮らしの一コマに思えるFadeevaさんの写真ですが、「マリウポリの物語」を読んでから再度写真の前に立つと、感じ方が変わるかもしれません。

キーウのアートデュオ「Vony Razom」(「They are together」の意味)の作品には、全身をタイツのような衣装に包んだ人物が登場します。Vony Razomの写真家Iryna iSkyさんのコメントによると、顔まで衣装に覆われているのは、今のウクライナ人に「顔がない」からなのだそう。ウクライナの様々な個人の表情・感情を、写真の中の人物が代弁しているのかもしれません。

Vony Razomの「Pain(痛み)」は、ウクライナの女性の感情を擬人化した作品(画像提供:UFFI)。腹部に縫い付けられた弾丸や枯れた花束は、暴行を受けた女性たちの心の傷を表します。

映画でウクライナにふれる

短編上映会にも、ユニークな作品が揃います。クセニア・ブグリモワさんが監督・制作した『種』は、特別な種から理想の男性を育てようと試みる主人公を描いたサイレント映画。ブグリモワさんはUFFIの共同創設者でもあり、上映会ではオンラインでのスピーチが予定されています。

『種』は、2016年のカンヌ国際映画祭短編部門で公開されました(画像提供:UFFI)。

この他にも、世界で活躍するウクライナの映画監督による短編映画が5本ラインナップされています。酒井さんは、「ウクライナの現代芸術はあまり日本で取り上げられないので、ウクライナにも才能のある若い芸術家がたくさんいることを伝えたいです」と話していました。

最後に

「授業やニュースで『知るべき』と半ば強制されてウクライナについて学ぶのではなく、『いい作品だな』という率直な感覚でウクライナの人が作ったものに興味をもってほしいです」と酒井さん。まずは写真や映画を目や耳や心で「感じる」ことが、「考える」への第一歩になるかもしれません。

上智大学は7月から、武力侵攻で影響を受けたウクライナの学生を留学生として受け入れます。今回の企画は、ウクライナについての知識量や考え方に関わらず、観る人それぞれにとって新たな発見のきっかけになりそうです。

〈アーティスティック・ウクライナ開催概要〉

【主催】上智大学比較文化研究所

【協力】上智学院カトリック・イエズス会センター

【写真展】6月30日まで(カトリック・イエズス会センターは平日9:00〜16:00に開室)

【短編映画上映会】6月29日17:30-19:30、6-101教室(参加登録はこちら

カトリック・イエズス会センター内および映画上映会では、ウクライナのチャリティー団体「Doors」への募金を受け付けています。

詳細はウェブサイトから。

れいれい
名前
れいれい
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国際教養学部 国際教養学科
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