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上智学生記者クラブ通信

#205 聖イグナチオ教会とは?
近いけど遠い? 大学のお隣を知ろう

2022.08.12

こんにちは、れいれいです。今日のテーマは、上智大学に隣接するカトリック麹町聖イグナチオ教会。四ツ谷駅からの通学時には必ず横を通る「身近」な場所ですが、一度も足を運んだことがないという人も多いかもしれません。実は、私もその一人でした。そこで今回は、「どんな場所?」「誰でも行っていいの?」という素朴な疑問で聖イグナチオ教会にアプローチします!

聖イグナチオ教会。楕円形の主聖堂の右隣には鐘楼が見えます。写真提供:聖イグナチオ教会

教会のあゆみ

17,439人(2021年現在)の信徒をかぞえ、日本最大級の教会となっている聖イグナチオ教会。その前身は、1936年に設立された「幼いイエズスの聖テレジア教会」です。献堂の約3年後に第二次世界大戦が始まると、日本人司祭の徴兵や外国人宣教師の強制収容といった危機に直面しました。

1936年、聖テレジア教会の献堂式。出典:『聖イグナチオ教会』。

聖テレジア教会は1945年の大空襲により全焼。終戦直後の物資不足の中、1949年にこの場所に完成したのが聖イグナチオ教会です。教会の名前は、イエズス会の創立者イグナチオ・デ・ロヨラと、イエズス会修道士で教会の設計を担当した建築家イグナチオ・グロッパーに由来しています。

1949年、イグナチオ教会の献堂式。出典:『聖イグナチオ教会二十五年史』。

半世紀にわたって愛されたこの聖堂は、老朽化と信徒の増加を受けて建てかえられ、1999年に現在の楕円形の主聖堂を中心とした教会が完成しました。

鐘の音に耳をすませば

四谷キャンパスで毎日耳にするのが、聖イグナチオ教会から聞こえる鐘の音。第二次世界大戦で使われた戦車や大砲を溶かして作られたドイツ製の3つの鐘が、鐘楼に設置されています。
鐘はそれぞれ、聖イグナチオの鐘・上智の座の鐘・聖テレジアの鐘と名づけられています。中でも「上智の座」は、カトリック教会で聖母マリアを讃える祈りに登場するラテン語「Sedes Sapientiae」を指します。同じ言葉が上智大学の校名の由来にもなっており、大学のエンブレムには「UNIVERSITAS SEDIS SAPIENTIAE(上智の座の大学)」と書かれています。

旧聖堂鐘楼の内部。右下が上智の座の鐘で、「Sedes Sapientiae」と刻まれています。出典:『巨きな木の舟』。
上智大学正門のエンブレム。「UNIVERSITAS SEDIS SAPIENTIAE」と書かれています。

教会の中へ

教会についてもっと詳しく知るため、協力司祭であるハビエル・ガラルダ神父にインタビューしました。スペイン出身のガラルダ神父は、1948年にイエズス会へ入会、1958年に初来日。上智大学では長年教鞭をとられました。

ガラルダ神父、聖イグナチオ教会内のマリア聖堂にて。

教会の活動を教えてください。

(ガラルダ神父) 聖イグナチオ教会の特徴は、インターナショナルだということです。日本語の他に、英語・スペイン語・ベトナム語のミサがあります。また、困っている人たちのための活動があります。「カレーの会」や「四ッ谷おにぎり仲間」※です。上智の学生もボランティアで来ていますよ。教会の根本は、祈りと愛です。愛は、行いによって困っている人を大切にすることです。
※聖イグナチオ教会内のグループが行う生活困窮者向けの活動。従来「カレーの会」は教会内での食事提供が行われていましたが、コロナ禍ではお弁当の提供に切り替えるなど、感染防止策がとられています。

信徒でない学生も教会を訪れてよいのでしょうか?

(ガラルダ神父) いつでも来てください。(聖堂に)ただ座って、心を落ち着ければいいのです。5分でも10分でも、気が向いたらここに入ってみてください。カトリックでなくても、人間としてここに来て、人のために祈ったりしてみてください。ここでは誰もがいつでも歓迎されています。
聖イグナチオ教会には、四ツ谷駅からも見える楕円形の主聖堂をはじめ、マリア聖堂やザビエル聖堂といったより小規模な聖堂があります。信徒であるかどうかに関わらず、誰でも入って腰を下ろし、静かな時間を過ごすことができます。主聖堂の地下には、クリプタと呼ばれる地下聖堂と納骨堂があります。

楕円形の主聖堂。キリストの復活の象徴である卵を表しています。日本画家の上野泰郎が原画を制作した12枚のステンドグラスは、火や水、樹など自然をモチーフにしています。写真提供:聖イグナチオ教会

卒業生に聞く、教会での思い出

学生にとって、教会はどのような場所でありうるのでしょうか? 新聞学科の卒業生で、幼少期から聖イグナチオ教会に通っていたというイエズス会の中井淳神父に聞きました。

インタビューに応える中井神父。小学生の時に参加した教会学校のキャンプでは、建て替え前の教会の鐘楼で肝試しをしたこともあるそう。

学生時代の教会での思い出を教えてください。

(中井神父) 大学生活は、将来のことを考え、自分自身を探す時間でした。教会の空間は、その時間と切り離せないと思います。あの空間で静かに座っている時間が、自分を作っていったような気がします。教会の鐘は、「ここにあなたがあなたでいられる場所があるよ」と希望の音を鳴らしてくれているんでしょうね。悩みやコンプレックスもありましたが、鐘の音に支えられて、希望を与えられながら歩んでいたのだと思います。

学生へメッセージをお願いします。

(中井神父) 教会は決して閉じないので、入って、ただそこに座って静けさに耳を澄ましてみてください。それはきっと大学生活を彩り、大学生活を支えていく時間になると思います。

素朴な土壁が特徴的なザビエル聖堂。「静かになりたい時はここで祈っていました」と中井神父。

おわりに

いかがでしたか? 取材の後、実際に聖堂へ入ってみると、想像していた堅苦しさを全く感じさせない、心地よい静けさのある空間でした。聖イグナチオ教会がどんな場所かを知るだけで、何気なく耳にしていた鐘の響きが少し違って聞こえるかもしれませんね。それでは、よい夏を!

〈備考〉
感染症対策として、ミサは予約制となっています(2022年8月現在)。また、パイプオルガン整備のため主聖堂が閉鎖される期間があります。詳細は聖イグナチオ教会のウェブサイト(https://www.ignatius.gr.jp/index_j.html)を確認してください。

〈参考文献〉
『聖イグナチオ教会』伊藤保編、聖イグナチオ教会献堂15周年記念祝賀委員会、1964年
『聖イグナチオ教会二十五年史』伊藤保編、聖イグナチオ教会献堂25周年記念祝賀委員会、1974年
『巨きな木の舟』聖イグナチオ教会献堂45周年記念写真集刊行委員会、1992年
『聖イグナチオ教会献堂記念写真集』聖イグナチオ教会献堂記念写真集編集委員会、2000年

れいれい
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れいれい
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国際教養学部 国際教養学科
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