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上智学生記者クラブ通信

#267 レトロモダン溢れる謎多き7号館を調査!
#ソ祭#建築#アート#ミステリアス#秘話

2023.11.24

……ところで7号館ってどこ?

記事を開きつつ、そう思いませんでしたか? 学生の間でもよく耳にするギモンです。そこでまず、こちらをご覧ください!

2014年撮影。
2011年撮影。
2008年撮影。

おばけや猫、かぼちゃなどかわいらしいモチーフが映し出されているのはなんと7号館の窓です! ライトアップの時期が10月末ということもあり、ハロウィンモチーフが多いですね! 過去にはソフィア祭の時期に、7号館の窓のライトアップがされていたこともありました。歴史を遡ると1971年には既にライトアップがされていたそうです。

1971年ソフィア祭前夜祭時の十字架モチーフのライトアップ。

いったい誰が、いつ使っているのか? 建物の正体は

2023年11月現在、足元の工事を終えた7号館。

そう7号館は北門の先にあるこの建物。右上に冠した「上智大学」の文字は四谷の交差点からも見えますね。学生の皆さんなら日に1度は下をくぐっているはず、なのに中に入る機会はほとんどない……。

では次の謎、誰がいつ? 意外にも14階の高さをほこる建物は、文学・神学専用、それも普通の教室ではなく研究室が並ぶ建物。そのため文学部・神学部の学生であっても、先生方のもとを訪れるときと、高学年になってゼミや卒論演習の授業を受けるときくらいしか足を運ばない場所になっています。そのかたわら、実は大学院の授業が毎日どこかしらの部屋で開かれています。

7号館7階、フランス文学科セミナー室の様子(左)と階段に取り付けられた案内板(右)。

学生からは「ほかと雰囲気が違う」「歴史を感じる」といった声も聞かれますが、基本「よく分からない」存在。そんな7号館も、急いで通り過ぎる前にちょっと足を止めてみると、実は奥が深いんです。

実は、7号館は50年以上もの歴史を有する建物なのですが、その設計をしたアントニン・レーモンド氏は日本において数々の名建築を残されてきた方です。レーモンド氏はボヘミア地方クラドノ、現在のチェコ共和国の出身です。近代建築巨匠の1人であるフランク・ロイド・ライト氏の助手として旧帝国ホテルの建築に尽力し、その後戦時中を除いた44年間日本に滞在し、病院やゴルフ場、学校に至るまでジャンルの垣根を超えた数々の建物を造ってきました。

チェコ共和国と上智大学

レーモンド氏はチェコ共和国の出身ですが、チェコ共和国と上智大学には多くのつながりが実はあるのです。チェコの有名なイエズス会士のルドヴィーク・アルムブルスター(1928-2021)氏は1969年~1999年まで哲学科で教鞭をとっていました。また、東京大空襲により焼失してしまった赤レンガ校舎はチェコの著名な建築家のひとりである、ヤン・レツル(1880-1925)氏による設計だったことなど、多くの結びつきがあるのです。昨年(2022年)の4月13日にはチェコ共和国のマルチン・トムチョ駐日大使が大学に表敬訪問をされました(チェコ共和国大使館公式HP参照)。

レーモンド建築の特徴

レーモンド氏の建築には共通するいくつかのイズムがあります。今回は4つに分けて特徴をご紹介します。

1. 自然との調和

レーモンド氏は、建築をするにあたり自然を傷つけずに、従来の状態を守っていくことを重要視しており、自然と風土に根ざした建物をたくさん手掛けられました。そのため、レーモンド設計の五原則の中にもNaturalが含まれています。

2. デザイン

レーモンド氏は、長年日本での生活で日本的な物に親しむ中、日本の陶器や庭などの古代芸術の中に存在する、「シンプルかつ動的なデザインにこそ真の価値がある」という信念を持つようになりました。単調で全体的なつりあいがとれた整っている様や、不自然さや高価さ、虚飾的なもので構成された躍動感のないデザインを彼は拒否しました。実際に7号館も四角い窓の大きさがすべて均一ではなかったり、側面に丸い窓があったり、壁面が三角形にくり抜かれていたり、節々から動的なデザインが垣間見られます。

7号館1階の丸い窓。
7号館入り口の三角形にデザインされた壁。

3. 耐震性

レーモンド建築は耐久性に優れていると言われています。頑丈で地震に耐えうる建築を、日本人建築家よりも薄い壁を用いて造るため、費用を削減することも可能となりました。関東大震災にも耐え抜いた旧帝国ホテルの建築に関わった耐震技術を有する建築家としての名誉もあり、地震大国の日本において多くの建築に携わりました。

4. 鉄筋コンクリート建築

鉄筋コンクリート建築はレーモンドの建築のアイデンティティともいえます。固有の技術と材料を開拓し、建築界に大きな影響を与えたと言われています。7号館もコンクリートで造られていることからもレーモンド建築の特色が色濃く表れていると考えられます。

全体的にコンクリートで造られた7号館の内装。

参考資料 

意外なつながり、続々

同じレーモンド氏の手によって7号館と一緒に建てられた校舎があります。それが旧6号館。今はなき校舎ですが、そのデザインは北門に受け継がれています。

1969年、『上智大学6・7号館竣工記念パンフレット』の装丁。

またデザインと言えば、2号館の外観に何か同じにおいを感じませんか? 実は2号館の真っ白な色や上のほうのデザインは、7号館との調和・統一を意識して設計されているそうです。

並んだ姿を見るとたしかに兄弟のよう。

現在2号館に研究室をもつ外国語学部も、以前は7号館に入っていたようです。

上智大学6・7号館竣工記念パンフレットより。

変わったり、変わらなかったり

かつては周りに高い建物もなく、四谷のランドマークだった7号館。キャンパスでも、近くに喫茶室や購買部がありにぎやかな一角だったといいます。こんな白いテントとベンチも並んでいたようで。

ごはんを食べたり、空きコマを過ごしたりと学生の憩いの場だったようです。

そんな7号館には現在、改修の噂もあります。来年の4月から始まる予定だと聞きました。

「7号館と言えば、一直線にのびる廊下が好きです」と語ってくれたのは、1970年代から80年代にかけてドイツ文学科生として過ごし、現在国文学科の事務をなさっている重村さん。

以前はこの廊下の先に真っ赤な夕焼けの富士山が見えたそうで、その光景が記憶に残っている卒業生も多いようです。

同じくドイツ文学科を卒業され、長年フランス文学科の事務を勤められてきた小山田さんは語ります。

「卒業した学生さんたちが久しぶりに訪ねてきたとき、皆さんたいてい『全然変わってない!』と懐かしそうにされるんですよ」

昔のままの風情を残し、変わらないところ。これが7号館の良いところだとお二人は話してくださいました。

7号館南側の窓からの眺め(左:1969年、右:2023年)に、キャンパスの変遷が窺えます。7号館はずっとここで、変わることなく上智大学を見ているのです。まるで絵本『ちいさいおうち』のように。

おわりに

主に現在、7号館は文学部や神学部の研究室がある建物ですが、普段の授業で使用することがあまりなく、今まで7号館に焦点を当てる機会がありませんでした。今回の記事を執筆したことで、イベント時の窓のライティングから、建築の拘り、2号館と7号館の関連性に至るまで、さまざまな角度から7号館について深く知ることができました。沢山の方々の想いや歴史が色濃く染みついた建物であることを認識したうえで7号館での学びを大切に育んでいきたいと思います。

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