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上智学生記者クラブ通信

#332 さあ音楽を聴きに行こう!
日本製鉄紀尾井ホール

2025.06.19

こんにちは、ノアです。今回は四ツ谷駅から徒歩6分(麹町駅から徒歩8分)、上智大学13号館に隣接する日本製鉄紀尾井ホールについて記事をお届けします!国内最高峰の音楽ホールで生の音楽に触れましょう!

日本製鉄紀尾井ホールは、日本製鉄株式会社(NIPPON STEEL CORPORATION 以下日本製鉄)の文化貢献事業として1995年4月2日に開館しました。800席のホールと250席の小ホール(邦楽ホール)を擁し、開館直後から日本を代表する音楽ホールとして数々の名コンサートが行われてきました。

今回は、そんな国内屈指の音楽堂、日本製鉄紀尾井ホールについてこのホールを運営する日本製鉄文化財団の小佐々さん(制作部長・91年上智法学部卒)花澤さん(事務局専門部長)のお話をお聞きしながら、記者クラブのゆづ記者と学生センター田中さんとともにホール内を見学させていただきました。

ホール2階席からの眺望

こだわり抜かれた響き

古くは戦前から鉄づくりを通じて日本の産業を支えてきた日本製鉄が、文化事業の一環として創設した日本製鉄紀尾井ホール。その魅力は何よりもこだわり抜かれた響きにあります。クラシックホールにおいて、残響は2秒前後が理想とされるなか、満席時に中音域で1.8秒の設計がされています。間口(ホールの横幅)が18 メートル、高さは16メートルの「シューボックス形」と呼ばれる設計で、理想的な響きを追求しています。

この音響設計により、聴衆はどの座席でも適度な反響を伴うクリアな音を聴くことができます。中規模のホールとしては比較的に大きな容量を持つため、大きな音が出るコンサート用のグランドピアノを強く鳴らしても飽和せずに響きます。ホールの形状のモデルはオーストリア、ウィーンにあるコンサートホールであるウィーン楽友協会がモデルになっているとのこと。計画時に、様々な欧米のコンサートホールを視察し、その中で楽友協会にモデルが定まったそうです。

東西の文化が出会う場所

計画当初からこの地が西洋と日本の音楽が出会い高めあっていく場所となるよう、同じ建物の5階に邦楽用のホールの併設が構想されました。邦楽界でも日本を代表するホールとして日本製鉄紀尾井小ホールは高い評価を得ています。

小ホールでは邦楽の普及を図ることを目的に、その分野の第一人者を招き演奏会が行われています。演目の理解を深めるために解説を伴う公演もあります。また邦楽とクラシックの化学反応を企図したコンサートも企画されるなど、まさに西洋と日本の文化が出会い交流する場となっています。(ホール情報誌「紀尾井だより」ではホールの最新情報を紹介しています。https://kioihall.jp/hall-bulletin/) 

5階の小ホール(邦楽ホール)

鉄づくりと音楽づくり

ホール誕生前、この土地には日本製鉄の所有する施設がありました。都内に様々な候補地が挙がる中で、江戸からの時代的なつながりを町名にも残しつつ、かつてオーストリア=ハンガリー帝国の大使館があった街の西洋的なイメージをも持ち合わせ、交通と環境の両面での立地のよさから紀尾井町が選ばれたそうです。

創立20周年の記念事業として、ホールに関する周辺事業の検討が日本製鉄(当時は新日本製鉄)の社内で行われました。そこで、日本製鉄がそれ以前から続けていたクラシック音楽のラジオ番組の提供や音楽賞授与などの音楽文化貢献の分野がフォーカスされました。「これからは、自分達で音楽づくりもしよう」との意気込みでホールを支える財団が設立されました。

今回お話を伺った、小佐々さん(写真右)花澤さん(写真左)と。インタビューに快く応じてくださり、インタビュー後にはホール館内も案内してくださいました。

それ以来バブル崩壊やリーマンショックなど企業として苦しい局面でも変わらずに支援が続けられてきました。危機のたびに音楽活動はやめないとの決断がなされたそうです。

花澤さんは開館当時お客さんとしてホールに足を運び 「このホールができたことは革命的なことだと思いました。素晴らしいホールが都内の真ん中にできた」と感じたそうです。ホールとして高い評価を得るには時間もかかる中で、日本製鉄紀尾井ホールは開館直後から、日本の音楽シーンで必要不可欠なホールとして受け止められてきました。

計画から掲げられたスローガンは「発掘、創造、交流、育成の場」。このスローガンのもと西洋音楽と邦楽の融合のみならず、若手音楽家や愛好家を育てるべく音楽賞の創設や若手演奏家が主役となる演奏会をはじめとする様々なプログラムが進められてきました。

「紀尾井みらいシート」(小・中・高校生向けの招待席)は未来の音楽愛好家を育てていく上で特に重要なものといいます。「何よりも大切なのは、思い出として子どもたちにホールに来たことを覚えてもらうことです。それはホールに来た際の、行き帰りの食事やホールで交わした親御さんとのちょっとした会話など、とにかくホールに来たことを記憶に留めてもらえればいいんです」と花澤さん。愛好家育成の鍵は、「広い視野」と「長期的なスパン」だと、力強く私たちにお話しくださいました。

1階ホールホワイエ

これからのホールと人と

そもそも現代は娯楽の多い時代。わたしたちの日常にもオンラインコンテンツやゲームなど刺激の多いものが溢れているもの。これからの時代に「生の音楽」を提供するホールが果たす役割をお聞きしました。

「娯楽が多様化しているため、愛好家は減っているように感じます。一方でホールに一度足を運んでみると、音が全身にドーンと来るリアルな体験ができます。好きなアーティスト、例えばサザンオールスターズのコンサートに行くのと同じ感覚で一度日本製鉄紀尾井ホールに足を運んでほしいです」と小佐々さん。

「生の音楽の魅力を直接感じることがホールで音楽を聴くことの価値の一つ。この場所では、録音やオンライン上では起こり得ないような素晴らしい瞬間があります。 感情の揺さぶられ方も自ずと異なってきます。家で音楽を聴いているときに、宅急便の配達や電話、LINEなど邪魔が入ってしまったら、中断せざるを得ませんよね。例えば、3時間程もあるJ.S.バッハの《マタイ受難曲》のような作品を家で聴くことは、現代人にはそもそも難しいはずです」と花澤さん。

奏者がステージに入場する楽屋スペース

まずは一度主催公演に

「クラシックも邦楽もその多くは娯楽としてお客さんを驚かせよう、楽しませようと思ってつくられているエンターテイメント。聴いてすぐに面白いと思えたはずです。U29のチケット(満29歳以下の人向けの優待料金)を利用すればかなり手頃な料金でコンサートを鑑賞できます。まずは気軽に一度足を運んでください。難しく考えず、その場で感じることを大切にしてください。」と花澤さんはお話されていました。

終わりに

上智のお隣にある日本製鉄紀尾井ホール。お二人へのインタビューやホールの見学を経て、上智大学に重なる特徴を持っていると感じました。「国内屈指のコンサートホール」として高い評価を得ながらも、西洋と日本の文化が混じり合う場所としての姿も目指してきた開館以来の活動。世界から人と知が行き交い、真に他者に奉仕するあり方を模索する、わたしたちの大学の目指す姿にリンクするものを感じました。大学のお隣で、日々新たな響きが生まれる日本製鉄紀尾井ホールにぜひ一度足を運んでください。温かく、そして誠実に対応してくださった小佐々さんと花澤さんに感謝申し上げます。

楽屋前には奏者の方々が各々おいていった置物が

日本製鉄紀尾井ホール

ウェブサイト:https://kioihall.jp/

住所:〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町6−5

電話番号:03-5276-4500

2025年8月〜2026年12月末までの1年5ヶ月は改修のため休館の予定

ノア
名前
ノア
所属
文学研究科哲学専攻
〇〇がすき!
バッハが好き
上智のいいところ
麹町の方から見た6号館