学生時代の自分探し
2023.03.27
学生時代の自分探し
2023.03.27
大学の中と外で、いまおきているあれこれを紹介する「上智のいまを発見」。
普段の授業では知れない学生時代のエピソードなど綴っていただく「先生コラム」の第19回目をお送りします。先生コラムは教員から次の教員をご紹介いただくリレー形式でお届けします。
今回は、樋口匡貴先生(心理学科)からのご紹介、出口真紀子先生(英語学科)です!
外国語学部英語学科の出口真紀子です。専門は文化心理学で、マジョリティ性を持つ側の人の差別に関する心理を研究しています。心理学科の樋口匡貴先生から渡されたバトン、大変光栄です。樋口先生の音楽への情熱など知らざる一面を垣間見ることができて、研究はもとより自分のやりたいことをとことん追求されている姿が素敵だなぁと思いました。
私はアメリカのボストン郊外にあるリベラルアーツの大学に進学したのですが、幼少期からアメリカに暮らしていたせいか日本という国に強い憧れを持っていました。おそらくアジア人としてアメリカで生活する中、アメリカ社会の一員だと感じられない疎外感を覚えていたためだろうと思います。自分の居場所を見つけたい、自分のルーツに対して誇りを持ちたいと願うと同時に、日本人でありながら日本の歴史や文化をほとんど知らずに育ってきたため、大学でも日本の社会や文学の授業をとって、空白を埋めていました。振り返れば、日本人としてのアイデンティティを模索することが私の大学時代だったのだと思います。
大学3年の時に東京にある大学に留学することにしました。「芥川龍之介を読む」や「日本の伝統芸能」といった日本文化を学ぶ授業を履修し、歌舞伎や狂言を観に行ったり、温泉旅行に行ったり、全てが新鮮で楽しく、いわゆる日本に初めてくる海外留学生と変わらない感覚だったと思います。テニスサークルにも入りましたが、上下関係が厳しく、性別によって役割分業があることに違和感を抱きつつも、「日本人から受け容れられたい」一心で無批判に同化しようと頑張ったのですが、周りから相当浮いていたように思います(笑)。ここで、私は自分が思っているほど日本人ではないかもしれない、と挫折を味わいます。
途中から日米学生会議という学生が運営している大学横断型のプログラムに合格して、アメリカ側の参加者40名が来日する学生会議に向けて毎週土曜日に勉強会をするという活動にハマっていきました。ここでは、先輩後輩といった上下関係がなく、初日からファーストネームで呼び合うというルールが代々受け継がれており、個人的にはとても居心地が良く、やっと自分の居場所を見つけたという感覚がありました。と同時に、周りの学生は社会問題に関心がある人が多く、当時の日米貿易摩擦や捕鯨問題といったテーマについて熱心に議論している様子を見て、自分は今社会で起きていることにいかに無知で無関心だったかを思い知る経験にもなりました。日本の大学生は遊んでばかりというステレオタイプを覆す学生たちとの出会いは貴重でした。私もいつかは日米間の相互理解につながるような仕事をしたいと、志を持つことができたと思います。
日米学生会議では、たくさんの友達ができ、卒業したら絶対に日本で暮らしたい! という思いが深まりました。翌年の日米学生会議の運営に携わる日本側の実行委員会に立候補したとき「真紀子は本当に日本人と言えるのか」という議論になりました。その時は、やっと自分の見つけた居場所から追放される恐怖から「いえ、ご安心ください。私は日本人です。日本が大好きです」と必死にアピールし、結果的に実行委員に選出されましたが、何をもって「日本人」と言えるのかという問いは、今でもずっと考え続けています。少なくとも、自分は日本国籍を保持し、日本語話者であり、堂々と日本人だと名乗ることができ、日本人と周りからみなされる特権を有していることは、間違いなく有利に働いているわけです。私の研究テーマ(日本人特権尺度の開発など)が当時の経験につながっているのかもしれない、とこのコラムを書いていて改めて気づく機会となりました。
大学時代は自分探しの時間です。若さゆえにがむしゃらにいろんなところに飛び込んでいけるエネルギーがあります。いろんな出会いや経験をする中で自分が何者であるかが少しずつ理解できるようになります。学生のみなさんも、若さならではのエネルギーで未知の世界に飛び込んでいってください。
次のコラムは総合グローバル学部の下川雅嗣先生にお願いしました。下川先生は誰に対してもフラットに接し、社会的公正への揺るぎないスタンスを保ちつつ、とても人間的でユーモアもあり親しみやすい人柄が大好きです。長い間のファンとして下川先生の大学時代についても知りたく、リレーバトンを渡します。
出口先生から下川雅嗣先生(総合グローバル学科)をご紹介いただきました。次回の「先生コラム」もお楽しみに。
2023.03.27
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2022.06.30
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