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上智のいまを発見

福武慎太郎
学生時代をふりかえる

2021.12.13

大学の中と外で、いまおきているあれこれを紹介する「上智のいまを発見」。
普段の授業では知れない学生時代のエピソードなど綴っていただく「先生コラム」 の第1回目をお送りします。先生コラムは教員から次の教員をご紹介いただくリレー形式でお届けします。
トップバッターは福武慎太郎先生(総合グローバル学科)です。

学生時代をふりかえる

2020年4月から学生センター長をしています。専門は文化人類学です。東南アジアのインドネシアや東ティモールでフィールドワークをしながら、紛争や難民問題、開発援助をめぐる問題についての研究のほか、インドネシア現代文学の翻訳に挑戦するなど、様々なことに関心を持って取り組んでいます。

大学生の時は文学部哲学科に所属していました。いろんなことに興味を持ち、取り組み始めては、いずれも中途半端に終わってしまうのは、いまも大学生のときも変わっていません。哲学科では、古代ギリシア哲学が専門の荻野弘之先生を師事しました。古代ギリシア哲学に関心があったからというよりは、荻野先生の明晰さ、授業の面白さに惹かれていました。しかし、荻野先生の求めるレベルに私は全く到達することができず、何度か授業中にひどく叱られたこともあります。授業態度にも問題があったのでしょう。情けなくて落ち込みはしましたが、怒られて当然だと申し訳ない気持ちでした。

学問への意欲だけはしっかりあって、習得が難しく履修者の少なかったギリシア語の授業を履修し、村上陽一郎先生の自然科学史に関する講義や、化学科の専門科目の化学史を履修するなど、自分なりの学問のビジョンを持って学習していました。同時に、高校時代から関心のあった文化人類学や中東イスラーム地域研究の科目を好んで履修しました(当時は外国語学部アジア文化副専攻科目として展開されていました)。哲学科の助手の方に顧問になってもらい、「現代思想研究会」なるものを同級生と立ち上げ、マルクスの『経済学・哲学草稿』の読書会もやりました。しかしその多くについて途中でついていけなくなり、中途半端に投げ出してしまいました。

記憶というのは、自分の都合の良いように書き換えてしまうものかもしれません。学業が疎かになったのは、部活動(フェンシング部に所属していました)に力を注いでいたからとずっと思っていました。しかしいま振り返ってみると、それなりに意欲を持って学問に挑んでいたことに気づきます。要は、授業についていくための実力が備わっていなかったのです。周囲の優秀な同級生に対しても劣等感を持っていました。部活動もアルバイトも、学業もしっかりやりたい。友人と遊ぶ時間も犠牲にしたくない。しかし自分の実力に見合った計画は大切ですね。

大学院に進学後、カナダのトロント大学に客員研究員として滞在していたことがあります。大学図書館の書庫で朝から晩まで過ごし、自分のペースで論文を読み、考える時間は最高に幸せでした。周囲と自分を比べるのではなく、マイペースで興味のある学問に取り組むスタイルが合っていたのかなと思います。いまでも一人前の研究者になったとは全く思えませんが、学問と共にあることの喜びを教えてくれた荻野先生には心から感謝しています。

次回は……

福武先生から荻野弘之先生(哲学科)をご紹介いただきました。次回の「先生コラム」もお楽しみに。